
化学物質のために ― 身近な化学物質
病名がなくても、からだは崩れます
「検査では、どこも悪くないと言われました」「季節の変わり目になると、決まって調子を崩すんです」
当店には、こうしたご相談が毎日のように届きます。そして、その背景をたどっていくと、暮らしの中の化学物質に行き当たることが少なくありません。
人の医療では、化学物質過敏症・香害・シックハウス症候群・経皮毒といった言葉が知られるようになりました。シックハウス症候群は、行政や医療でも扱われています。化学物質過敏症や香害は、原因や診断の方法について、専門家の見解がまだ一致していません。経皮毒は医学の言葉ではありませんが、皮膚から化学物質が入ることは確かめられています(第4章)。はっきりした病名がなくても、体調を崩す人が実際にいることは、国も認めています。
柔軟剤や香水などの香りについて、消費者庁・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・環境省の5つの省庁は、連名でポスターを作っています。2021年の題は「その香り、困っている人がいるかも?」でした。2023年の改訂で、それが「困っている人もいます」に変わりました。
質問票を使った日本の調査では、一般の人の約6%に、化学物質への過敏が強く疑われるという結果が出ています。同じように過敏を訴える人を5年間追いかけた研究では、67.7%が良くなっていました。 良くなった人には、規則正しい暮らしや、適度な運動との関連が見られました。
国民生活センターに寄せられた柔軟剤のにおいの相談928件のうち、64%は「体に害があった」という申し出でした。そして71%は、相談した人と、その柔軟剤を買った人が別の人でした。お隣など、自分以外の人が買った柔軟剤のにおいについての相談が、たくさん含まれていたのです。
では、ワンちゃん・ネコさん・フェレちゃんはどうでしょうか。
この子たちについての研究は、ほとんどありません。けれど、同じ哺乳類です。一部の化学物質では、活性酸素や炎症を通じて細胞が傷つくことが、人でも動物でも確かめられています。 どの物質に弱いかは、動物の種類によって違います。それは「からだが受けるダメージ」のページでお話しします。
しかもこの子たちは、人と同じ家で、同じ空気を吸って暮らしています。床に近いところで過ごし、毛づくろいで体に付いたものを口に運びます。 研究者のあいだでは、犬や猫を「家の化学物質の見張り番」と呼ぶことがあるほどです。
洗剤も、柔軟剤も、芳香剤も、フードも、お薬も。この子たちのまわりにあるものは、すべて人が選んだものです。この子たちは、自分で選ぶことも、逃げることもできません。
このページでは、化学物質がどこから入ってくるのかを、入口ごとにお話しします。すべてを避けることはできません。けれど、減らせるものは、思っていらっしゃるよりもたくさんあります。 そして、入ってしまった分を出すからだの働きは、毎日のごはんが支えています(「正しく食べて守る」のページ)。

第1章 化学物質とは ― このページでお話しするもの
水も、塩も、ビタミンも、化学物質です。世の中のものは、すべて化学物質でできています。
その中には、自然の中にもともとあるものと、人が作り出したものがあります。同じ物質が、自然の中にも工業製品の中にもあることもあります。人が作り出した物質の多くは、産業が盛んになってからの、ごく短い歴史しか持っていません。からだへの害は、天然か合成かだけでは決まらず、物質の性質と量で決まります。
このページでいう「化学物質」は、からだにとっての“不要なもの”のうち、外から入ってくるもののことです。人が作り出したものだけではありません。重金属のように天然のものでも、からだにとって不要なものは含めて考えます。
ここで大切なのは、「量」と「毎日続くこと」です。
化学物質の安全の基準は、多くの場合、1つの物質ずつ、人を対象に決められています。たとえば、国が決めている室内の空気の化学物質の指針値は、人の健康を守るための値です。ワンちゃん・ネコさん・フェレちゃんの安全を、直接保証してくれる値ではありません。
そして当店が気にかけているのは、いくつもの物質を、毎日、少しずつ、重ねて浴び続けることです。1つ1つは基準の内側でも、暮らし全体でどれだけの量になるのかを、測っている人はいません。
からだが“不要なもの”をどうやって処理しているのかは、「代謝と解毒のために」のページで詳しくお話ししています。
第2章 入口① 外の空気
黄砂は、砂だけではありません
春になると、中国大陸やモンゴルから黄砂が飛んできます。3月から5月が多く、西日本ほど多く届きます。
黄砂は、砂漠の砂の粒です。けれど、日本に届くまでのあいだに、途中の工業地帯の汚れ(硫酸塩や硝酸塩など)や、細菌・カビをまとってやってきます。韓国の観測では、砂塵が飛んできたときに、空気中の細菌の量が約5.5倍に増えていました。
人では、黄砂のあとに喘息の症状が悪くなる子どもが増えること、スギ花粉と重なると症状が出る人が増えることが分かっています。熊本の研究では、黄砂が観測された翌日は、急性心筋梗塞を起こした人が多く、オッズが1.46倍という関連が見られました。
日本の空気は、きれいになりました。でも、ゼロではありません
環境省が2026年5月に公表した数字では、全国の測定局のPM2.5の年平均は8.4 μg/m³でした。環境基準の達成率は99.5%です。日本の空気は、この10年ほどで確かにきれいになりました。
それでも、世界保健機関(WHO)が示している指針(年平均5 μg/m³)と比べると、全国の平均はまだ上回っています。夏の光化学スモッグの主な成分である光化学オキシダントは、環境基準を達成した測定局が0%のままで、注意報は年に延べ77日出ています。
空気は、この15年で大きく変わりました
日本でPM2.5の測定が全国で始まったのは、2010年度です。そのころの全国の年平均は15 μg/m³前後で、2014年度ごろまで、ほとんど下がりませんでした。2013年の1月から2月には、西日本で何度も濃くなり、70 μg/m³を超える値が観測された地域もありました。国が「1日の平均が70 μg/m³を超えそうな日は、不要不急の外出を減らして」という目安を出したのも、この年です。
その後は下がり続け、2016年度 11.9 μg/m³、2024年度 8.4 μg/m³になりました。
当店が見てきたこと
ここからは、研究のデータではなく、当店の見てきたことです。
当店は、2008年から2014年あたりが、いちばん空気の悪い時期だったと考えています。そしてこの時期を境に、当地では野良猫さんを見かけることが、ぐっと少なくなりました。 外で生まれた子たちが、育っていないのではないかと推察しています。
飼い猫さんでも、この時期に子猫の時代を過ごした子たちに、化学物質に過敏な子が多いように感じています。この時期を境に、アレルギーの子が増えているのかもしれません。
夏の光化学スモッグ ― 光化学オキシダント
PM2.5が下がったいまも、減っていない汚れがあります。光化学オキシダントです。
車や工場から出る窒素酸化物と、揮発性の有機化合物に、強い日差し(紫外線)が当たってできます。4月から10月、とくに7月・8月の、晴れて暑く、風の弱い日の日中に濃くなります。夜には下がります。
光化学オキシダントの大部分(9割以上)はオゾンです。残りには、目にしみる成分などが含まれます。
| 中身 | 主に傷めるところ(目安) |
|---|---|
| オゾン(大部分) | のど・気管・肺 |
| PAN(パーオキシアセチルナイトレート) | 目 |
| アルデヒド類など | 目・鼻 |
※人でも、症状を物質ごとに分けて調べたデータはありません。目安としてご覧ください。
| 濃さ(1時間の値) | 決まり |
|---|---|
| 0.06 ppm | 環境基準(これを超えないのが望ましい値) |
| 0.12 ppm | 注意報。目がチカチカする、のどが痛む、息苦しいといった症状に注意するよう呼びかけられる |
| 0.24 ppm | 警報(自治体によって違うことがある) |
※これらは行政の決まりの値で、「ここから症状が出る」という境目ではありません。オゾンによる目や気道への刺激は、濃さと、浴びた時間の長さで強くなります。人でも、感じ方には大きな個人差があります。
環境基準を達成できている測定局は、ほぼ0%のままです。2024年度には、14の都府県で、延べ77日、注意報が出ました。人では、気道の炎症や喘息の悪化が知られていて、子どもとお年寄りが影響を受けやすいとされています。
ワンちゃん・ネコさんで、注意報くらいの濃さのオゾンを調べた研究はありません。けれど当店は、光化学オキシダントに反応している子が多いと感じています。夏の午後に、目をしょぼしょぼさせる、咳をする、ぐったりする。そんな日は、光化学オキシダントの値を確かめてみてください(第8章)。
ワンちゃん・ネコさんでも
英国では、動物病院の受診およそ700万件を調べた研究があります。PM2.5が高い時期ほど、ワンちゃん・ネコさんの受診の件数が増える関連が見られました。
メキシコシティは、大気の汚れがひどいことで知られる都市です。そこで暮らす若く健康なワンちゃんの脳を調べると、炎症と、細かな粒子の沈着が、空気のきれいな町のワンちゃんより多く見つかりました。同じ町の野良犬の肺では、細い気管支に長く続く炎症が見つかっています(研究者は、粒子とオゾンが混ざった空気による変化と考えています)。
当店は、ごはんを整えても治りきらない子の背景に、空気の汚れがあることを長く見てきました。空気は、いちばん軽く見られていて、いちばん逃げられない入口です。
外の汚れは、家の中にも入ってきます
外の空気の汚れは、窓や換気口から家の中に入ってきます。お隣の家から流れてくるものもあります。家の中の化学物質は、家の中で出たものと、外から流れ込んだものが混ざり合っています。
そして、空気の中の粒やほこりは、床に降り積もり、人が歩くたびに舞い上がります。 床に近いところで暮らすシッポたちは、それを吸い込み、毛づくろいで口にする機会が、私たちより多くなります。

第3章 入口② 家の中の空気と、床のほこり
「窓を閉めていれば、家の中は安心」と思っていらっしゃいませんか。
台湾の大学の動物病院で、ワンちゃん230頭・ネコさん118頭のお宅の空気を、実際に測った研究があります。家の中のPM2.5が35 μg/m³を超えるお宅では、ネコさんの呼吸器の病気のオッズが4.13倍という関連が見られました。呼吸器の病気のワンちゃんのお宅では、お線香を焚いていることが多くありました。
家の中には、外とは違う汚れの出どころがあります。
香り ― 柔軟剤・芳香剤・消臭スプレー
国民生活センターは、柔軟剤を使った洗濯物を部屋に干して、空気を測る試験をしています。香りの強いタイプを表示どおりの量で使うと、空気中の化学物質(揮発性有機化合物)の量が増えました。表示の2倍の量を使うと、その増え方はさらに2倍以上になりました。 無香・微香のタイプでは、増えませんでした。
香りを長持ちさせるために、香りの成分を小さなカプセルに閉じ込めた柔軟剤もあります。
ネコさんの首輪に、空気中の化学物質を吸い取る小さなタグを付けて測った研究があります。甲状腺機能亢進症のネコさんでは、合成の香料(ムスクの仲間)の成分が多い傾向がありました(統計的にはっきりした差ではありません)。香害で問題になる香料の成分が、ネコさんの暮らしの空気の中に、実際にあるのです。当店は、香りのする製品は、天然のものも含めて使わないことをお勧めしています。
防虫剤と、押入れの除湿剤
衣類の防虫剤には、いくつかの種類があります。
- 樟脳・ナフタレン・パラジクロロベンゼン
においの強いタイプ。ナフタレンは赤血球を壊し、貧血を起こすことがある。 - ピレスロイド系
においの無いタイプ。蚊やダニの殺虫剤にも使われる。においが無いので、使いすぎてしまいやすい。
当店は、ピレスロイド系の防虫剤で、寝起きにふらついたり、震えたりする子を見てきました。防ダニ加工のカーペットや寝具は、何年も効き目が続くように作られています。
押入れの除湿剤にも、防カビ剤や防虫成分が入っているものがあります。酸素室やケージのそばに、防虫剤や除湿剤を置かないでください。 狭い空間では、濃くなってしまいます。
煙 ― タバコ・お線香・蚊取り線香
喫煙者のいるお宅のネコさんでは、リンパ腫が2.4倍、5年以上続くと3.2倍という関連を示した研究があります(1つの研究です)。毛に付いた煙の成分を、毛づくろいで舐め取ってしまうことが理由の1つと考えられています。
お線香も、蚊取り線香も、煙です。蚊取り線香を使うなら、窓の外や玄関の外で使ってください。
アロマも厳禁です。 アロマキャンドルも、ディフューザーで香りを広げるのも、同じです(理由は第4章でお話しします)。
「空気をきれいにする」はずの機械
オゾンを出す機械や、空間に薬剤を撒く除菌の機械は、空気をきれいにするつもりで、かえって汚してしまうことがあります。 国民生活センターも、オゾン発生器について注意を呼びかけています。
新しい家・新しい家具 ― シックハウス
建材や接着剤、家具の塗料からは、ホルムアルデヒドなどの揮発性の化学物質が出ます。気温が上がるほど、たくさん出てきます。新築やリフォームのあと、新しい家具やカーテンを入れたあと、外壁の塗装のあとに調子を崩す子がいます。
人では、これがシックハウス症候群です。ご家族の体調不良とも、じかにつながっています。
2003年に建築基準法が変わり、ホルムアルデヒドを出す建材には等級(いちばん少ないのが「F☆☆☆☆」)が付けられ、住まいには24時間換気が義務付けられました。国は、室内の空気の13の化学物質について、指針値も決めています。
それでも、万全ではありません。
- F☆☆☆☆の建材でも、ホルムアルデヒドがゼロになるわけではない。
- 法律で建材が規制されているのは、ホルムアルデヒドとクロルピリホス(防蟻剤)の2つだけ。
- 規制された物質の代わりに使われた別の物質で、新たに体調を崩した例がある。
- 家具・カーテン・じゅうたん・ワックス・防虫剤は、建築基準法の対象外。
シックハウスに対応した壁紙や糊を扱う業者さんもいらっしゃいます。けれど、当店がお話を伺った業者さんも、それで万全ではないと認めていらっしゃいました。転居でなくても、内装の一部をリフォームしただけでも起こります。
新築の家を測った例では、建ててから約2か月の測定でホルムアルデヒドが指針値を超え、その約3か月後の測定で指針値の内側に下がりました。けれど、夏にはまた上がります。家具に使われる板からの放散が、2年間ずっと続いた実験もあります。当店は、引っ越してから3年ほどは、とくに気をつけていただくようお伝えしています。
人は、つらければ外に出かけることができます。けれど、ワンちゃん・ネコさん・フェレちゃんは、つらくても自由に外へ出られません。
フッ素樹脂加工の空焚き
フッ素樹脂加工(テフロンなど)のフライパンやホットプレートは、ふつうに調理しているぶんには、150〜190℃ほどです。
問題は空焚きです。
| 温度(目安) | 起こること |
|---|---|
| 260℃ | 使ってよい上限。超えると表面が傷み始める |
| 280℃くらい | ここまで熱くなると、小鳥の中毒が報告されている(安全の境目ではない) |
| 315〜375℃ | この温度の煙を吸って、人がインフルエンザのような症状(テフロン熱)になった報告がある |
| 350℃を超える | 表面が分解して、有害な細かい粒やガスが出る |
表の温度は、性質の違う目安を並べたもので、「この温度になれば必ず中毒になる」という意味ではありません。樹脂の種類や加熱の時間によっても変わります。空焚きをすると、5分ほどで350℃に届くことがあります。 IHの最大の火力は、とくに急です。
小鳥は、この煙で突然死ぬことがよく知られています。オカメインコが5羽、30分のうちに亡くなり、飼い主さんもテフロン熱になった例があります。ワンちゃん・ネコさん・フェレちゃんで起きたという報告は見つかっていません。けれど、哺乳類でも肺を傷めることは、動物の実験で確かめられています。
- 空焚きをしない。予熱もしない。
- 最大の火力を使わない。
- うっかり空焚きをしてしまったら、火を止めて、シッポたちを別の部屋へ移し、換気する。
トイレ
固まるタイプの猫砂の細かな粉、香り付きの猫砂やペットシーツ。トイレは、毎日、顔を近づける場所です。 開けたての袋に顔を近づけて、深呼吸できるかどうか。ひとつの目安にしてください。
床のほこり
家の中のほこりには、家具や家電に使われている燃えにくくする薬剤(難燃剤)などが含まれています。
米国のネコさん23頭を調べた研究では、血液中の難燃剤(PBDE)の濃度が、米国の大人の20〜100倍でした。床の近くで暮らし、足や毛に付いたほこりを毛づくろいで口に運ぶことが、大きな入口と考えられています。
すべての化学物質が、人より多いわけではありません。有機フッ素化合物(PFAS)では、ネコさんと人はほぼ同じくらいでした。それでも、「床に近い」「毛づくろいをする」という暮らし方そのものが、入口になっていることは知っておいていただきたいのです。
第4章 入口③ 体に付けるもの ― 経皮毒
皮膚からも、入ってきます
「経皮毒」という言葉は、2005年ごろの書籍をきっかけに広まりました。医学の正式な言葉ではありません。けれど、皮膚から化学物質が体に入ること(経皮吸収)そのものは、研究で確かめられています。
たとえば、人に6時間、特定の化学物質(フタル酸エステル)を含む空気の中で過ごしてもらった実験があります。皮膚から入った量は、吸い込んで入った量と同じくらいでした。 肺だけでなく、皮膚も入口になるのです。
洗剤やシャンプーに使われる合成の界面活性剤の一部は、濃さや触れている時間によって、皮膚のバリアを傷めます(人や実験動物で確かめられています。ワンちゃん・ネコさんでの研究はまだありません)。 当店は、合成洗剤の成分は、すすいでも衣類や寝具に残るとお伝えしてきました。
シッポたちの場合 ― 体に付いたものは、口に入ります
ここが、人といちばん違うところです。
ネコさんは、起きている時間の1割近くを毛づくろいに使うといわれます。ワンちゃんも、足や体を舐めます。皮膚や毛に付いたものは、そのまま口に入り、食べたものにもなります。
洗剤の残った寝具、柔軟剤の香りがする毛布、ワックスや洗剤で拭いた床。この子たちは、それらに体をこすりつけて暮らしています。
精油(アロマ)は、天然でも使いません
精油の成分(フェノール類など)は、からだの中では肝臓で処理される成分です。そしてネコさんは、この処理の一部が生まれつき苦手です(「肝臓のために」「代謝と解毒のために」のページでもお話ししています)。
ですから精油は、ネコさんにとって「香り」の問題ではありません。肝臓で処理しきれない物質が、からだに入ってくるという問題です。 舐められる場所に使うのも、空気の中に広げるのも、避けてください。
米国の中毒の記録では、ティーツリーオイルによる中毒がワンちゃん337頭・ネコさん106頭ありました。約9割は、飼い主さんがノミ対策などのために、よかれと思って使ったもので、多くは原液を皮膚に付けた場合でした。ワンちゃんも、中毒を起こします。
「天然だから安心」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。けれど精油は、植物の中の特定の成分だけを取り出して、濃くしたものです。自然の中で、この形、この濃さのまま出会うことはありません。 植物を丸ごと食べるのとは、まったく違うものです。当店は、精油は天然のものでも「本当の天然」ではないと考えています。 ですから、天然のものであっても使いません。
シャンプー
当店は、シッポたちの体は、お湯あみや蒸しタオルで汚れを落とすことをお勧めしています。お散歩のあとも、蒸しタオルで拭いてあげてください。
皮膚は「最大の臓器」と呼ばれ、からだの外側を外敵から守っています。シッポたちの皮膚は、さらに被毛に覆われています。私たちの皮膚よりも弱いことを、想像してあげてください。
シャンプーをするときは、まずブラッシングで、抜け毛・ほこり・毛の絡まりを取り除きます。次に、シャンプー剤を付ける前に、お湯でしっかり洗います。ほこりや、水に溶ける汚れは、これで流れます。ダブルコートの子は、表面だけでなく、毛の根もとまで全体を濡らすと、シャンプー剤が広がりやすくなります。シャンプー剤の役目は、皮脂や古い角質といった、お湯だけでは落ちにくい油の汚れを落とすことです。
シャンプー剤は、香りの無いもの、合成の界面活性剤を含まないもの、できるだけ天然の成分が多いものを選んでさしあげてください。薬用シャンプーで、アレルギーが悪くなる子もいます。
もしも皮脂がたくさん出るようなら、シャンプーよりも、ごはんの見直しが先かもしれません。
ノミ・ダニの薬は、皮膚に付けて全身に広げる薬です
首の後ろに垂らすタイプのノミ・ダニの薬は、皮膚に付けて、全身に行き渡らせるしくみのお薬です。皮膚の表面の脂にとどまって効く成分もあれば、皮膚から血液に入って効く成分もあります。
使うかどうかの考え方は、第7章でお話しします。
★ワンちゃん用のノミ・ダニの薬を、ネコさんに使わないでください。
ワンちゃん用の薬には、ペルメトリンという成分が入っているものがあります。ネコさんには強い毒です。英国の中毒の相談に寄せられた286例では、96.9%のネコさんに症状が出ました。 ワンちゃんに付けた薬を、同居のネコさんが舐めたり、触れたりして起きることもあります。
ふるえ・けいれん・よだれが出たら、すぐに病院へ連れて行ってください。通院できない場合は、ご連絡ください。
庭の除草剤
除草剤を撒いた芝や庭に触れるスコティッシュ・テリアでは、膀胱がんのオッズが3.62倍という関連を示した研究があります(1つの犬種を調べた研究です)。除草剤を撒いていないお宅でも、8軒のうち4軒のワンちゃんの尿から、除草剤の成分が見つかりました。お散歩の道すじに、手入れの行き届いた芝生がないか、気にかけてみてください。
同じように、お散歩の道のそばに畑や田んぼがあれば、農薬の心配もあります。気をつけてあげてください。
第5章 入口④ 食べ物 ― 添加物と、原料に残るもの
食品添加物は、およそ1,500品目
日本で使える食品添加物は、2025年8月時点で、次のとおりです。
- 指定添加物 476品目
- 既存添加物 327品目
- 天然香料 約600品目
- 一般飲食物添加物 約100品目
指定するのは内閣総理大臣で、所管は消費者庁です。
「日本は添加物の数が世界一」と言われることがありますが、国によって数え方が違うので、数だけでは比べられません。大切なのは、数ではなく「どの品目か」です。
日本で使えて、欧米で禁止・制限されているもの

規制の理由は、物質や国ごとに違います。赤色3号は、オスのラットでがんが見つかったことが理由で、米国の役所自身は「人での害は示されていない」としています。二酸化チタンは、EUが「安全だと言い切れない」と判断しました。どちらも、人で毒だと証明されたという意味ではありません。 規制の決まり方も、理由も、それぞれ違います。
それを「猛毒」と申し上げるつもりはありません。けれど、わざわざ毎日食べさせる理由も、どこにもありません。
これらの添加物は、人の食品だけでなく、サプリメントの錠剤の白いコーティングや、子ども向けのお菓子の色付けにも使われています。ペットフードやおやつの原料にもなりえます(ペットフードでどれだけ使われているかは、製品ごとの原材料表示で確かめるしかありません)。
シッポたちだけのことではありません。人家族さんの健康にも関わります。
ここでお伝えする品目は、日本で使えて、欧米で禁止・制限されている食品添加物のごく一部であることを、ぜひ覚えておいてください。
ペットフードの決まり
ワンちゃん・ネコさんのフードには、ペットフード安全法という決まりがあります。
- エトキシキン・BHA・BHT(酸化防止剤)
合わせて150 μg/gまで使える。ワンちゃん用のエトキシキンは75 μg/gまで。 - プロピレングリコール
ネコさん用には使えない。 - 着色料・保存料
ペットフード独自の一律の上限値は設けられていない。
エトキシキンは、人の食品には使うことが認められていない酸化防止剤です。それが、上限つきでペットフードには使えるのです。
そして、フェレちゃんのフードは、この法律の対象ではありません。 法律が対象にしているのは、ワンちゃんとネコさんのフードだけです。
表示に出てこないもの
原料の段階で使われた添加物(キャリーオーバー)は、できあがった商品の表示には出てこないことがあります。
ジャーキーや歯磨きガム、嗜好性の高いウェットフードには、リン酸塩や乳化剤が使われていることがあります。リン酸塩は「ピロリン酸ナトリウム」「ポリリン酸ナトリウム」、あるいは「結着剤」「pH調整剤」といった名前で書かれます。
原料に残るもの
添加物のほかに、原料そのものに残っているものがあります。
- 残留農薬
穀物・野菜・果物に。 - かび毒
原料の穀物や豆、保管の状態から。中国の市販のフード126製品を調べた研究では、9割以上から2種類以上のかび毒が見つかった(多くは基準値の内側)。 - 重金属
魚や内臓の原料、ミネラルの添加物から入ることがある。
どれも「少しずつ、毎日、いくつも」という入り方です。
「ヒューマングレード」の意味
「ヒューマングレード」は、法律で決められた言葉ではなく、メーカーによって意味が違います。多くは「人の食品と同じくらいの原料を使っている」という意味で使われていますが、添加物が少ないことや、できあがったフードの安全までを約束する言葉ではありません。 言葉の響きだけで、安心なさらないでください。
第6章 入口⑤ 水
水道水は、たくさんの人に、安全な水を届けるための公衆衛生の水です。細菌を殺すために塩素が使われ、塩素が水の中の有機物と反応すると、トリハロメタンなどの物質ができます。古い配管からは、金属が溶け出すこともあります。
水道水の水質基準は、2026年4月から52項目になりました。このとき、有機フッ素化合物(PFOS・PFOA)が基準に加わり、合わせて1リットルあたり50ナノグラム以下と決められました。
「沸かせば安心」とも言い切れません。トリハロメタンは、沸かし始めにかえって増え、しばらく沸騰を続けると減っていきます。
毎日飲む水は、からだの中を流れて、“不要なもの”を運び出す水でもあります。どんな水を選ぶかは、「正しく食べて守る」のページでお話しします。
第7章 入口⑥ 医薬品とワクチン
効くものには、副作用もあります
医薬品の多くは、もともと体の中には無い物質です。 体の働きに強く作用するから、効き目があります。そして、効き目があるからこそ、副作用も起きます。
ホルモン剤やビタミン、電解質のように、有効成分が体の中にある物質のお薬もあります。けれど、お薬には有効成分のほかに、錠剤を形にする添加剤、糖衣やコーティング、ワクチンのアジュバント(免疫の反応を高めるために加える成分)や保存剤などが一緒に入っています。成分によっては、それが体に障ることもあります。
ワンちゃん・ネコさんで、実際に確かめられている例があります。
- プロピレングリコール
ネコさんの赤血球を傷める。 - 一部の添加剤(注射薬の溶かし剤など)
ワンちゃんで、アレルギーのような反応を起こす。 - キシリトール
人のお薬やガムに使われている。ワンちゃんに低血糖を起こす。
使いすぎていないか
日本の犬猫の病院で使われている抗菌薬は、年間およそ30トンと推計されています。公式の統計の約2.1倍で、6割は人用のお薬でした(2021年の研究)。
人の医療でも、日本は幅広い菌に効く飲み薬の抗菌薬(第3世代セファロスポリンなど)を多く使う国で、国が使い方を見直す目標を立てています。
長く効くタイプのステロイドの注射を受けたネコさん731頭を調べた研究では、その後28頭(3.83%)が糖尿病と診断されていました(比べる群のない観察研究です)。米国では、ネコさんにメロキシカム(痛み止め)を繰り返し使うことに、「急性腎不全と死亡」の警告が付いています。
当店は、お薬を否定しているのではありません。本当に助けが要るときには、助けてもらってよいのです。 ただ、症状を抑えるだけのお薬が、いくつも重なっていないか。それを確かめ、決めるのは、飼い主さんです。
副作用が気になるときは、かかりつけの先生に、減薬のご相談をなさってください。農林水産省の「動物用医薬品の副作用情報」では、お薬の名前で、これまでの副作用の報告を調べることもできます。
ワクチン
当店の考えは、「原則として、ワクチンは要らない」です。 ただし、里子に出る子犬・子猫は、新しいお家で万が一脱走してしまうことを考えて、やむを得ず、という立場です。
ワンちゃんの狂犬病ワクチンは、法律で決められた義務です。
世界小動物獣医師会(WSAVA)の2024年の指針は、基本のワクチン(コアワクチン)を勧めたうえで、不要なワクチンや、打ちすぎを避けるよう求めています。ワンちゃんのジステンパー・アデノウイルス・パルボウイルスと、ネコさんのパルボウイルスは、血液の抗体検査で、追加の接種が要るかどうかを判断できます。
ワクチンにも副反応があります。日本のワンちゃん57,300頭を調べた研究では、1万頭あたり63頭に副反応が起きていました。ネコさんでは、注射をした場所にできる悪性の腫瘍が、接種した1万頭あたり1〜10頭と推定されています。
研究として発表されていなくても、「ワクチンのあとに体調を崩したから、もう二度と受けない」と思って、このページをご覧くださっている方は多いと思います。
ワクチンは、接種が必要な環境で暮らしている子もいれば、接種を避ける必要がある体調・体質の子もいます。
自分で選ぶことができない我が子のことです。「1年に1度」「生涯続ける」といった言葉よりも、何を守るのか、何が大切か、もしものときの備え(リスクヘッジ)をどうするかを、親の目線で考えてさしあげてください。
ワクチンと感染症については、「ナンナさんのノート」で改めてお伝えいたします。気長にお待ちください。
ノミ・ダニの薬
当店の考えは、「原則として、ノミ・ダニの薬は要らない」です。 ただし、ノミ・ダニにひどく侵された状態で保護された子や、古い家屋でノミが自然に発生してしまった場合など、条件によっては必要になります。
米国食品医薬品局(FDA)は2018年に、ある系統のノミ・ダニの飲み薬で、筋肉のふるえ・ふらつき・けいれんが起こりうると注意を呼びかけました。
ノミを見つけたら、まずは人の手で。ノミ取り櫛、お湯あみ、そして部屋の掃除です。どうしても薬を使うときは、その副作用に勝てるだけの、からだの準備が必要です。
第8章 減らし方 ― 今日からできること
入口ごとに、今日からできることをまとめました。すべてを一度にしなくてかまいません。できるところから始めてください。

外の空気
- PM2.5や黄砂、光化学オキシダントの値を見る習慣をつける。環境省の「そらまめくん」(https://soramame.env.go.jp/ )では、近くの測定局の1時間ごとの値(速報値)が見られる。夏は「OX」(光化学オキシダントのこと。第2章)を、PM2.5は1年を通して確かめる。予報は「PM2.5まとめ」(https://pm25.jp/ 、個人の運営)などで見られる。
- 悪い日・悪い時間は、窓を細く、短く開ける。
- 洗濯物は部屋に干す。
- 空気清浄機(当店はインテリピュアコンパクトをお勧めしています)は、シッポたちがいちばん長く過ごすお部屋だけでなく、汚れが入ってくる玄関にも置く。
- ケージや寝床は、床から高いところに置く(床のほこりから離すため。当店のお勧めです)。
- お散歩から帰ったら、蒸しタオルで体を拭く。
家の中
- 洗濯は、せんたく石けんに替える。人の衣類も同じ。
- 合成洗剤や柔軟剤を使っていたら、洗剤を替える前に洗濯槽のクリーニングをする(成分が洗濯機の中に残っていることがあるため)。
- 香りのする製品は、天然のものも使わない。
- 防虫剤・殺虫剤と、防虫・防カビの成分や香料の入った除湿剤は、片付ける。
- 新しい布製品は、袋から出して風を通し、洗ってから使う。
- 大掃除や工事、衣替えのときは、シッポたちを別の部屋へ。
- 床は、化学雑巾やワックスを使わずに拭く。
- 消臭や除菌は、薬剤を撒くのではなく、プリートエイジーで空気を管理する(当店のお勧めです)。
- ★外の空気が悪い日に窓を締め切るなら、その前に、家の中で化学物質を出しているもの(香りの製品・防虫剤・防虫成分入りの除湿剤・殺虫剤・煙など)を先に減らす。 それらを残したまま締め切ると、家の中の空気がかえって濃く汚れる。
体に付けるもの
- お湯あみと蒸しタオルをしっかりと。シャンプーは最小限に。
- アロマは、天然でも使わない。
- ワンちゃん用のノミ・ダニの薬を、ネコさんに使わない。
食べ物
- 長い時間の置きごはんをしない(空気中の粒が降り積もるため)。
- 原材料の表示を読む。
- 添加物の多いおやつを減らす。
住まいの変化を振り返る
体調を崩した時期と、次のような変化が重なっていないか、振り返ってみてください。
- リフォーム・外壁の塗装・床下の防蟻処理
- 新しい家具・カーテン・カーペット
- 洗剤・柔軟剤・消臭剤を替えた
- 近所の工事、お隣の洗濯物のにおい
原因が見つかれば、それを取り除くことができます。
むすび ― すべきことは、2つだけです
外の空気、家の中の空気、体に付けるもの、食べ物、水、そして医薬品とワクチン。たくさんの入口をお話ししてきました。
全部を覚えていただく必要はありません。化学物質を、すべて避けることはできません。 空気は選べませんし、お隣の柔軟剤も止められません。お薬だって、必要なときがあります。できあがったフードに残っている化学物質を、すべて取り除くこともできません。
それでも、できることがあります。
すべきことは、2つだけです。
1つめ 入ってくるものを減らす
- 空気と暮らし
外の汚れを持ち込まず、家の中の出どころ(香り・防虫剤・煙)を減らす。 - ごはん
添加物の多いフードやおやつを減らし、原材料の表示を読む。 - 医薬品とワクチン
本当に必要かを考え、不要なものは受けない。決められるのは、飼い主さんだけです。
2つめ 出す働きを支える
- ごはん
出す働きに使われるたんぱく質・ビタミン・ミネラルを、毎日のごはんで届ける。 - 水
からだの中を流れて“不要なもの”を運び出す水を、しっかり飲めるようにする。 - 腸
ウンチとして出す腸を、毎日のごはんで整える。
減らすことと、出すこと。 この2つが、化学物質から我が子を守る両輪です。
入ってきた化学物質が、からだの中で何をするのかは「からだが受けるダメージ」のページで、出す働きをどう支えるのかは「正しく食べて守る」のページで、お話しします。
怖がってばかりいては、毎日が楽しくなくなってしまいます。けれども、知っていれば、できることがあります。 一緒に、ひとつずつ始めましょう。
化学物質のためのサプリ・フード・暮らしの道具
毎日のごはんに合わせる、基本の栄養補助食品。MSM
健やかな体作りに。ルンブルQ
血液と血管のために。アルティジャーノ発酵野菜
毎日のごはんに、野菜の力を。ヘンププロテイン
植物のたんぱく質。インテリピュアコンパクト(旧メディエアー)
お部屋の空気のために。マグネシウム入浴剤
お湯あみに。プリートエイジー
お部屋とモノの消臭・除菌に。安心やさい
食品の除菌洗浄。MRN-100 高機能π(パイ)ウォーター
毎日の水分に。タヒボNFD(健康茶)
NinnaNannaの健康茶。
これらは治療薬ではなく、獣医さんの治療に代わるものではありません。持病があったり、治療中のお薬がある場合は、原材料と使い方をご確認のうえ、かかりつけの先生にもご相談ください。
*NinnaNanna(ニンナナンナ)では、シッポを持つ家族の総称としてシッポちゃんと呼びます。
また 犬 をワンちゃん、猫 をネコさんと敬意を以て表現しています。




