症状別サプリメント/心臓のために


心臓のために ― ワンちゃん編

心臓のために ― 犬と猫では、壊れ方がまるで違います
◆犬の心臓病(このページ)/猫の心臓病/酸素室について/食べられなくなる前に
お悩み・目的から探す ― ほかのテーマへ
代謝と解毒/腎臓/肝臓/下部尿路/胃腸/膵臓/嘔吐/重い食欲不振/糖尿病/甲状腺/ウェイトダウン/◆心臓(このページ)/脳/目と鼻/免疫力/アレルギー/炎症と痛み/腫瘍と癌/皮膚と被毛/口腔/骨と関節/化学物質

休まない臓器

心臓は、生まれる前から、止まるその瞬間まで、一度も休みません。

1分間に、小型犬で90〜140回、中型犬で80〜120回、大型犬で60〜100回(目安です)。1日にすれば、大型の子でも9万回、小型の子なら20万回に届きます。 私たちが眠っているあいだも、我が子の胸の中では、小さな筋肉の塊が打ち続けています。

「心臓に雑音があります」「心臓が少し大きくなっています」

そう言われた日から、飼い主さんの毎日は変わってしまいます。目の前の我が子はいつもどおり元気なのに、心配だけが増えていく。そして多くの場合、その日のうちにお薬の話が始まります。

このページは、その不安を「今日からできること」に変えるために書きました。お伝えしたいのは、たった3つです。

  • 心臓は、ミネラルとタウリンとビタミンで動いているだからこそ、ごはんで支えることができます。
  • 心臓のお薬のいくつかは、その心臓を動かしているものを、体から出してしまうとくに利尿剤です。これは当店の考えではなく、お薬の説明書に書かれていることです。
  • 私たちがしたいのは、お薬を否定することではありませんお薬を取り入れるまでの時間を、できるだけ安全に、長くすることです。

心臓の病気は、たしかに命に関わります。けれど、飼い主さんにできることは、思っていらっしゃるよりもずっとたくさんあります。

第1章 心臓のしくみ ― 4つの部屋と、4枚の扉

まず知っていただきたいのは、心臓がどんな形をしていて、何をしているか、です。難しい言葉が続きますが、覚えていただく必要はありません。あとの章で何度も戻ってきます。

心臓には、部屋が4つあります。

右心房 → 右心室 → 肺 → 左心房 → 左心室 → 全身

血液は、この順に、一方通行で流れていきます。逆に流れないのは、部屋と部屋のあいだ、部屋と血管のあいだに扉があるからです。扉は4枚。

僧帽弁(左心房と左心室のあいだ)、三尖弁(右心房と右心室のあいだ)、大動脈弁(左心室の出口)、肺動脈弁(右心室の出口)。

この扉は、血液を通したあと、きちんと閉じます。閉じるから、血液は戻りません。

ここでひとつ、覚えておいていただきたいことがあります。

僧帽弁は、肺から帰ってきた血液が、体の中でいちばん最初に通る扉です。三尖弁は、全身から回収されてきた血液が通る扉です。

このことは、第15章でもう1度お話しします。ワンちゃんの心臓の病気を考えるうえで、とても大切な意味を持っています。

犬の心臓と血液の流れ。4つの部屋と4枚の弁、肺でのガス交換

第2章 心臓を動かしているのは、ミネラルです

心臓は、脳から「動け」と命令されて動いているわけではありません。心臓は、自分で電気を起こして、自分で動いています。

では、その電気は何が作っているのでしょうか。ミネラルです。

電気を帯びたミネラルの粒(イオン)が細胞を出入りして電流が生まれ、その電流が心臓の筋肉を縮めたり、ゆるめたりしています。

役割は、きれいに分かれています。

  • ナトリウム 細胞の中へ流れ込んで、興奮のきっかけを作る
  • カルシウム 流れ込んで、心臓の筋肉を縮める(実際に力を出しているのは、これです)
  • カリウム 細胞の外へ出ることで、筋肉をゆるめる
  • マグネシウム この出入りを調整する門番

4つのうち、どれが欠けても、心臓のリズムは乱れます。とくにマグネシウムは、忘れられがちです。

腎臓には、こし出したカリウムを尿へ捨てる出口があります。マグネシウムは、その出口をふさぐ栓の役目をしています。 栓がゆるむと、カリウムは尿へ流れ出てしまいます。 いくら補っても、その分が尿から出ていき、血液中のカリウムは上がってきません。

マグネシウムが足りていないときは、先にそちらを満たさなければ、カリウムは満たせません。

心臓が縮むのはカルシウム、ゆるむのはカリウム。

きっかけを作るのがナトリウムで、その出入りを整えるのがマグネシウムです。

この4つの名前を、どうか覚えておいてください。第10章で、そのまま出てきます。

心臓を動かす4つのミネラル。ナトリウム・カルシウム・カリウム・マグネシウム

第3章 もうひとつ、心臓に欠かせないもの ― タウリン

「タウリンは目に良い栄養だ」

そう聞いたことのある方が、多いのではないでしょうか。栄養ドリンクの広告でも、そのように紹介されています。

けれど、タウリンをいちばん欲しがっているのは、心臓です。

心臓の中にある遊離アミノ酸の、50%以上をタウリンが占めています。これほど偏って存在している栄養素は、ほかにありません。

タウリンは、心臓で何をしているのか

タウリンは、心臓の筋肉の収縮する力を高めます。力強く縮めれば、1回で送り出せる血液の量が増え、心臓は打つ回数を減らせます。 ゆっくり働けるようになるのです。

さらにタウリンは、交感神経の暴走を防ぎ、心臓の筋肉が過剰に収縮することを抑えます。

タウリンは、心臓に「もっと働け」と言う栄養ではありません。

「そんなに急がなくていい」と言ってくれる栄養です。

★ここが、いちばんお伝えしたいところです

ネコさんワンちゃん
AAFCO(アメリカ飼料検査官協会)の決まり必須栄養素。最低量が定められている必須栄養素に入っていない。最低量の定めもない
その理由とされていること自分でほとんど作ることができないから自分で作ることができるから

ワンちゃんのフードには、タウリンを加えなければならない、という決まりがありません。

「自分で作ることができるから」というのが、その理由です。

けれど、その決まりが作られたとき、作る力が生まれつき弱い子がいることも、ごはんの内容しだいで作れなくなることも、まだ知られていませんでした。

作れなくなる条件は、実際にあります

ワンちゃんは、メチオニンとシステインという2つのアミノ酸から、タウリンを作ります。けれど、この道すじは、そう簡単ではありません。

  • 材料が少ないごはんメチオニンとシステインは、質の良い動物性タンパク質に多く含まれています。
  • ビタミンB6がなければ、作れませんメチオニン → システイン → ヒポタウリン → タウリン。この道すじのあちこちでB6が要ります。高タンパクのフードでは、B6が足りなくなることがあると、当店は考えています。
  • 作ったそばから、腸から出ていきますワンちゃんの胆汁酸は、その多くがタウリンと結びついた形で分泌され、95%は肝臓に戻って再び使われます。腸の状態が悪ければ、この巡りが崩れ、失う量が増えます。 腸を整えることが、タウリンを守ることになります。
  • 豆類の多いごはん、食物繊維の多いごはん胆汁酸の排泄が増えるぶん、タウリンも一緒に出ていきます。
  • 作る力が弱い犬種がいますゴールデン・レトリバー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ニューファンドランド、イングリッシュ・セッターなど。

年を重ねると、減るのでしょうか

2023年、大きな話題になった報告がありました。人では60代の方の血液中のタウリンが乳幼児に比べて8割ほど少なく、マウスやアカゲザルでも加齢とともに減っていた、というものです。

ところが2025年、この報告は覆されました。 アメリカの国立衛生研究所が調べ直したところ、血液中のタウリンは加齢で減っておらず、増えるか、変わらなかったという結果でした。

ですから「年をとるとタウリンが減る」とは、いまのところ言い切れません。それでも当店は、年を重ねた子ほど、タウリンを意識していただきたいと考えています。血液の中の量が減らないことと、心臓が必要とする量をまかなえているかどうかは、別の話だからです。年を重ねれば、食べる量も、腸から吸収する力も落ちてきます。

タウリンは、肝臓でも活躍する栄養です。 肝機能や肝臓回りの不具合を抱えるワンちゃんの数を思えば、後回しにできる栄養素ではないと、私たちは考えています。

タウリンは、腎臓の発育にも欠かせません。 心臓と腎臓は、いつもセットです。

タウリンを作る道と失う道。ビタミンB6とB群、胆汁酸と腸

第4章 いちばん多い病気 ― 僧帽弁が閉じなくなる

どのくらい多いか

僧帽弁閉鎖不全症は、動物病院で見つかるワンちゃんの心臓病の、およそ75%を占めます。

13歳の小型犬では最大85%に見られ、オスはメスの1.5倍。20kg未満の小型犬に多い病気です。

小型犬が高齢になれば、多くの子に起こるということです。

正直に申し上げます。生まれつきの場合もあるでしょう。 小型犬であること、年齢を重ねることは、飼い主さんにはどうにもできません。

けれど、病気が進行する速さは変わります。 このページでお伝えしたいのは、このことです。

僧帽弁だけではありません ― 三尖弁のこと

第1章でお話しした、4枚の扉を思い出してください。

僧帽弁が傷むとき、三尖弁も一緒に傷んでいることがよくあります。

僧帽弁は肺から帰ってきた血液が、三尖弁は全身から回収されてきた血液が通る扉です。2枚の扉は、入ってくるものと、出ていくはずのものの、両方にさらされ続けています。

三尖弁の逆流が強くなると、血液が全身側に滞り、お腹に水がたまったり、首の血管が浮いたりします。

当店が気になっていること ― 小型犬用のフード

中型犬や大型犬のものより、高タンパクに設計された小型犬専用のフードがあります。ほとんどの飼い主さんは、パピーの時代から「小型犬用・パピー用」の高タンパクフードを選ばれます。

当店は、これがビタミン・ミネラルの不足を招いていると考えています。とくにカルシウム、マグネシウム、ビタミンB群です。

タンパク質が増えれば、代謝のためにビタミンB群が余計に使われます。骨を作る時期にカルシウムとマグネシウムが釣り合わなければ、骨は十分に育ちません。

小型犬に骨折が多いことも、心臓の病気が多いことも、ここにつながっていると考えています。

しかも、おやつはジャーキーです。 タンパク質に偏り、ミネラルの不足はさらに加速します。

心雑音について、ひとつだけ

雑音があるからといって、必ず弁が悪いとは限りません。 貧血、発熱、幼い子の生理的なもの、心臓の出口が狭いときにも、雑音は聞こえます。雑音の強さと病気の重さも、一致するとは限りません。

第5章 もうひとつの心臓の病気 ― 拡張型心筋症

弁ではなく、心臓の筋肉そのものが弱ってしまう病気があります。拡張型心筋症です。

僧帽弁の病気とは、壊れ方が逆になります。

  • 僧帽弁の病気 扉が閉じなくなり、血液が逆流する
  • 拡張型心筋症 心筋が薄く伸びて、縮む力そのものが落ちる

心臓は風船のように広がり、大きくなります。けれど、その大きさは「力強さ」ではなく、「力が出せなくなった結果」です。

なりやすいのは大型犬と中型犬で、ドーベルマン、ボクサー、グレート・デーン、アイリッシュ・ウルフハウンド、ニューファンドランド、コッカー・スパニエルなどが知られています。

遺伝によるものは、ごはんでは治りません。 ここは正直に申し上げます。

★けれど、ごはんが関わる型があります

この病気こそが、タウリンの話が完結するところです。

2018年、タウリンが足りなくなっていたゴールデン・レトリバー24頭についての報告が出ました。

食事を変えてタウリンを補ったところ、24頭のうち23頭で、心臓の超音波検査の数値が明らかに良くなりました。 心不全だった11頭のうち9頭で、肺や胸にたまっていた水が消え、5頭は利尿剤が必要なくなり、4頭は量を半分以下に減らすことができました。

食事を変えただけ、と申し上げるつもりはありません。タウリンの補給も心不全の治療も同時に行われており、どれがどこまで効いたのかは分けられません。

それでも、これは実際に起きたことです。 査読を経た学術誌の記録です。

「グレインフリーだから危ない」ではありません

2018年、アメリカのFDAが、穀物を使わないフードを食べている犬に、この病気が出たという報告を調べ始めました。豆類やじゃがいもを主原料にしたフードが中心でした。

けれど、FDAは一度も「グレインフリーが原因だ」とは述べていません。

述べているのは「食事とこの病気のあいだの、関連の可能性」であり、「複数の要因が関わる、複雑な科学的問題である」ということです。2022年12月には「意味のある新しい科学的情報が得られるまで、定期的な更新は行わない」としています。

穀物を抜いたから危ない、という単純な話ではありません。

問題は、穀物があるかないかではなく、必要な栄養が全て足りているかどうかです。

第6章 そのほかの、知っておいていただきたいこと

飼い主さんが「心臓」と結びつけられないまま見逃してしまうものを、短くお伝えします。

突然ぐったりする ― 心臓を包む膜に水がたまる

心臓は、膜に包まれています。その膜の中に液体がたくさんたまり、その圧力で心臓が広がれなくなると、心タンポナーデという危険な状態になります。(※液体がたまること自体と、心臓が広がれなくなることは、同じではありません。少量なら症状が出ないこともあります)

元気がなくなる、ふらつく、失神する、倒れる。お腹がふくれる(水がたまります)。歯ぐきが白い、呼吸が速い、疲れやすい。

原因には、心臓の腫瘍があります。ゴールデン・レトリバーなどに多い血管肉腫や、心臓の付け根にできる腫瘍です。

「急にぐったりした」「お腹だけがふくれてきた」は、心臓のことかもしれません。すぐに診てもらってください。

失神する ― 不整脈のこと

心臓のリズムが乱れると、脳に送られる血液が一瞬とだえて、倒れます。

★これは、てんかんの発作と間違われることがあります。

見分けるための手がかりがあります。ただし、これで決めつけることはできません。 どちらとも言えない倒れ方もありますし、両方を持っている子もいます。

  • ★目が覚めたあと心臓が原因のときは、すぐにいつもどおりに戻ります。 てんかんの発作のあとは、数分から数時間、ぼんやりしています。ここがいちばん分かりやすい違いです。
  • 倒れている時間心臓が原因のときは数秒から30秒ほどと短く、てんかんの発作は1分前後のことが多いです。
  • 起きる場面心臓が原因のときは、興奮したとき、咳のすぐあと、排尿・排便のあとに多く見られます。てんかんの発作は、休んでいるときや眠っているときにも起こります。
  • 前ぶれてんかんの発作では、そわそわする、隠れる、よだれが出るなどの前ぶれがあることが多いです。

★次の2つは、どちらでも起こります。見分けには使えません。

手足のつっぱりや、けいれんのような動き。 てんかんの発作でよく見られますが、心臓が原因で倒れたときにも起こります(脳に血液が届かなくなるためです)。おしっこや便をもらすこと。 これも、どちらでも起こります。

ワンちゃんで知られている不整脈には、次のようなものがあります。

  • 洞不全症候群心臓のリズムを作り出している場所そのものが弱り、脈が遅くなったり、一瞬止まったりします。ミニチュア・シュナウザーに出やすいことが知られています。
  • 心房細動心房が細かく震えるだけになり、脈がまったく不規則になります。3つの大学病院で診療された僧帽弁の病気のワンちゃん2,194頭の研究では、2.7%に見られました。心臓の病気が進んでいる子、大型犬、左心房が大きい子ほど多くなります。
  • 不整脈原性右室心筋症心臓の筋肉が、脂肪や線維に置き換わっていく病気です。危険な不整脈が出て、失神や突然死の原因になります。ボクサーに多く見られます。

倒れたときの様子を、動画に撮っておいてください。 いちばんの手がかりになります。

生まれつきの心臓の病気 ― 子犬のうちに

生まれつき心臓に異常がある子がいます。よく見られるのは、次の4つです。

  • 動脈管開存症お腹の中にいるあいだだけ使う血管が、生まれたあとも閉じずに残ります。大動脈から肺動脈へ血液が流れ込み続け、心臓に余分な仕事をさせます。
  • 肺動脈狭窄症右心室の出口が狭く、肺へ送り出すのに強い力が要ります。右心室の壁が厚くなっていきます。
  • 大動脈弁下狭窄症左心室の出口の少し手前が狭く、全身へ送り出すのに強い力が要ります。失神や突然死の原因になることがあります。
  • 心室中隔欠損症左心室と右心室を隔てる壁に、穴が開いています。小さければ生涯なにも起きないこともあり、大きければ心不全になります。

★ここで、大切なことをお伝えします。

生まれつきの病気でも、幼いうちに症状が出ないことのほうが、むしろ多いのです。

動脈管開存症の520例を調べた研究では、73.8%に、はっきりした症状がありませんでした。 多くは、ワクチンや健康診断のときに心雑音が聞こえて見つかっています。

だからこそ、子犬のうちに胸の音を聴いてもらう意味があります。

動脈管開存症のふつうの型は、手術やカテーテルで閉じることができ、多くのワンちゃんで良い経過が期待できます。(※重い肺高血圧を伴う型では、閉じられません)

肺の血管の圧が上がる ― 肺高血圧症

僧帽弁の病気が進むと、肺の血管の圧が上がることがあります。咳、失神、お腹の張り、疲れやすさとして出てきます。お薬(シルデナフィル)が使われます。

第7章 心臓が大きくなる ― 戻るものと、戻らないもの

「心臓が大きくなっています」と言われたとき、まず考えるべきは、「なぜ大きくなったのか」です。理由はひとつではありません。そして、理由によって、その後がまったく違います。

理由があって大きくなった心臓

心臓に余分な仕事をさせる理由があると、心臓の筋肉は、その仕事に応えようとして厚くなったり、広がったりします。

高血圧(狭くなった血管に送り込むために、強く打つ必要がある)。貧血(薄い血液で酸素を運ぶために、たくさん送らなければならない)。そして、★血が濃すぎる、粘っている ―― いわゆる「ドロドロの血液」です。

★この「血の濃さ」「粘り」は、当店がとくに気にしているところです。

赤血球が増えすぎた状態(多血症)や、いつも脱水ぎみの子では、血液の粘りが上がります。粘りが上がると、細い血管の流れが滞ります。 血の塊ができやすくなること、細い血管が傷むことも、獣医療でよく知られています。

では、そこから心臓の筋肉が厚くなるのか。

重い多血症の子で、そうなった症例の報告はあります。 けれど、ふつうの軽い脱水から心臓の筋肉が厚くなるというところまでは、確かめられていません。

ここから先は、当店の考えです。

粘った血液を細い血管へ押し込むには、より強い力が要ります。その力を出し続けることが、心臓にとって余分な仕事になっている ―― 当店はそう考えています。

血の粘りは、お水とビタミン・ミネラルで整えます。ならば、今日からお家で、どの子も取り組めます。

戻りにくいもの

一方で、弁そのものが分厚く変性してしまった場合や、遺伝による拡張型心筋症で心筋が作り変わってしまった場合は、元には戻りません。一度できた線維(硬い組織)は、戻らないのです。

だから、こう考えています

理由があって大きくなった心臓は、その理由が取り除かれると、戻っていくことがあります。

弁や筋肉そのものが作り変わってしまった心臓は、戻すことよりも、これ以上進ませないことが目標になります。

そして、どちらであっても、心臓にかかる余分な負担を減らすことには意味があります。

からだは1つです。 心臓は要の臓器ですが、全身のすべてと繋がっていることを思い出しましょう。

飼い主さんが確かめられる手がかり

血圧(高ければ二次的な負担がかかっています)、貧血がないか(血液検査のヘマトクリットで分かります)、脱水していないか(お水を飲んでいるか、おしっこの色はどうか)、そして年齢と犬種。

ごはんの内訳と検査の結果から、心臓に掛かる負担を1つずつ探り出しましょう。お迷いの際はご遠慮なくお声がけください。

第8章 どこまでが「ごはんの時間」か

心臓に雑音があると言われた日、多くの飼い主さんが、その場でお薬を渡されます。「まだ様子を見ましょう」と言われることもあれば、「早いうちから」と言われることもあり、飼い主さんはますます迷われます。

ここでは、世界の循環器の先生たちが決めた指針を、そのままお伝えします。

僧帽弁の病気は、5つの段階に分けられています。

  • ステージA なりやすい犬種だが、心臓に異常はない。雑音もない
  • ステージB1 雑音はあるが、心臓はまだ大きくなっていない
  • ステージB2 心臓が大きくなってきた
  • ステージC 心不全の症状が出た
  • ステージD 治療をしても治まらない

※ステージB3というものはありません。 B2の次は、心不全が出たCになります。

ここでいう「心不全の症状」とは

心不全とは、心臓が送り出す力に、体が必要とする量が追いつかなくなった状態です。行き場をなくした血液が手前で滞り、水があふれ出します。

肺の側にあふれたとき 安静時の呼吸が速い(いちばん早く出るサインです)。呼吸が苦しそう、口を開けて呼吸する。咳が出る。舌や歯ぐきが紫っぽい、白っぽい。※ワンちゃんでは、咳が出ないまま呼吸だけが速くなることもあります。

全身の側にあふれたとき お腹がふくれる(お腹に水がたまります)。首の血管が浮く、手足がむくむ。

どちらにも共通するもの 疲れやすい、散歩を嫌がる、途中で座り込む。食欲が落ちる。失神する、倒れる。

この中でいちばん早く、いちばん確かに出るのが「安静時の呼吸の数」です。

ステージA・B1では、薬も療法食もすすめられていません

国際的な指針は、ステージAとステージB1について、「薬による治療も、食事療法も推奨しない」としています。

心雑音を指摘されただけで、あわててお薬を始める必要はありません。

これは当店の考えではなく、世界の循環器の先生たちが定めた指針です。

ステージB1の子には、6か月から12か月ごとに、レントゲンまたは超音波で見直すことがすすめられています。

つまりこの段階でやることは、「半年から1年に1度、心臓の大きさを確かめること」だけです。お薬を飲まずに、ただ待つ期間があるということです。

その待つ期間を、ただ待つのではなく、心臓を大きくさせないために使う。 当店がお手伝いできるのは、ここです。

では、いつ変わるのか

僧帽弁が閉じきらなくなると、左心室が送り出した血液の一部が、左心房へ逆戻りします。 逆戻りした血液は、肺から戻ってくる血液と合わさって、左心房と左心室をふくらませます。

ステージB2とは、その「ふくらみ」が、検査で測れる大きさになった状態です。

ここでいう「測れる」とは、レントゲンと超音波(エコー)のことです。お腹の見た目や、外から触って分かるものではありません。国際的な指針では、次の4つがそろったときとされています。

心雑音の強さが、6段階のうち3以上。レントゲンで、心臓の大きさが背骨の長さの10.5個分を超えている(VHSという物差しです。ふだんの値は犬種によって違うことも知られています)。超音波で、左心房が大動脈の1.6倍以上、左心室が体重で補正した値で1.7以上。

心臓の筋肉は、ふくらんだ分だけ強く引き伸ばされ、より多くの血液を送り出さなければならなくなります。 余分な仕事が、はっきりと増えている段階です。

ふくらみが限界を超えると、行き場をなくした血液が肺にたまります。これが肺水腫で、ステージCです。

360頭のワンちゃんを対象にした信頼できる大規模な試験で、ピモベンダンというお薬を使った群と、使わなかった群を比べました。

心不全の発症・心臓が原因の死・安楽死までの期間は、お薬を使った群が1228日、使わなかった群が766日。心不全の発症だけで見ると1337日と846日で、寿命そのものの差は、およそ5か月でした。

「ステージB2でお薬を飲まなければ、早くステージCに進むのか」

この試験の結果を読むかぎり、その可能性はあります。お薬を使わなかった群のほうが、心不全になるまでの期間が、およそ500日短かったからです。

そのため当店では、ステージB2に入った子に、お薬をやめるようにとは申し上げません。

そして、こう考えています

ステージB1のあいだは、心臓を大きくさせないことに全力を注ぐ。

ステージB2に入ったら、お薬の力も借りる。

>

私たちは、お薬を否定しているわけではありません。

お伝えしたいのは、お薬を取り入れるまでの時間を、

できるだけ安全に、長くできるということです。

犬の僧帽弁の病気の5つの段階。ステージA・B1・B2・C・D

第9章 家で気づく ― 寝ている子の呼吸を数える

心臓の病気で、飼い主さんが家でできるいちばん簡単で確かなことは、寝ている我が子の呼吸を数えることです。

道具も費用も要りません。必要なのは、1分間と、書き留めるペンと紙だけです。

数え方

眠っているとき、または静かに休んでいるときの、1分間の呼吸の回数を数えます。胸やお腹が上がって、下がって、これで1回です。

正常は、1分間に15〜30回。 この数字は、健康な子も、症状のない心臓病の子も、治療がうまくいっている心不全の子も、すべて同じです。

なぜ、これが効くのか

ステージが上がり、肺に水がたまり始めると、咳や食欲の変化よりも先に、呼吸の数が増えます。

眠っているときの呼吸は、興奮や暑さ、運動の影響をほとんど受けません。変化があれば、それは体の中で起きていることを映しています。

これは当店の考えではありません。国際的な指針に、こう書かれています。

安静時の呼吸数が、その子のふだんの値より上がっていることは、

心不全がこれから崩れることを予測する物差しとして、いちばん優れている

記録の仕方

1日1回、または週に1〜2回。できれば毎日同じ時間に。 大事なのは1回の数字ではなく、その子のふだんの値と、その動きです。元気なうちから数え始めるのが理想で、そうすれば「その子の普通」が分かります。

心臓について何も言われていない子でも、今日から始めていただけます。そして、いざというときに、あなたが獣医さんより先に気づけます。

寝ている犬の呼吸数の数え方と、1週間の記録表。正常は1分間に15〜30回

咳について ― 見分けるより、呼吸を数えてください

「咳が出ます」というご相談を、たくさんいただきます。

心臓が大きくなると、左心房が真上にある気管を押し上げます。 この仕組みは確かです。気管虚脱では、「ガーガー」というアヒルの鳴き声のような咳が出ます(小型犬に多く見られます)。トイ犬種では、心臓の病気と慢性気管支炎と気管虚脱が、同時にあることが珍しくありません。

咳の音や、出る時間だけでは、心臓なのか気管なのかを見分けることはできません。

さらに、ワンちゃんの肺水腫では咳が目立たず、「呼吸が速い」「苦しそう」が主な症状になることがあります。

咳が出ていなくても、安心はできません。呼吸の数が上がっていれば、肺に水がたまりつつあるかもしれないのです。

だからこそ、呼吸を数えていただきたいのです。

急ぐサイン

  • 安静時の呼吸数が、1分間に40回を超えた状態が続いている
  • 口を開けて呼吸している
  • 舌や歯ぐきが紫っぽい、白っぽい
  • 突然ぐったりした、倒れた

すぐに病院へ向かってください。通院が難しい場合は、当店へご連絡ください。

第10章 お薬は、心臓を動かしているものを、体から出してしまう

まず、お薬が何のために出ているかを

お薬を否定するところから始めたくはありません。それぞれに、はっきりした目的があります。

  • 利尿剤(フロセミド、トラセミド)肺や胸にたまった水を引かせます。これができるのは、お薬だけです。
  • ピモベンダン心臓の筋肉がカルシウムに反応しやすくして収縮を強め、同時に血管を広げます。
  • ACE阻害薬・ARB・スピロノラクトンRAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)を抑えます。心臓が弱ると、体は「血が足りない」と勘違いして血管を締め、水をため込もうとします。それが、かえって心臓を疲れさせるのです。

そのうえで、知っておいていただきたいこと

お薬体から出ていく/乱れるもの
フロセミドカリウム↓ マグネシウム↓ ナトリウム↓ カルシウム↓
トラセミドカリウム↓(フロセミドよりさらに起きやすい) マグネシウム↓
スピロノラクトンカリウム↑(上がる側)
ACE阻害薬カリウム↑
ARB(テルミサルタン)カリウム↑ 赤血球数↓

※このほかに、利尿剤では水に溶けるビタミンB1も尿から失われると考えられています(人での研究と動物実験で確かめられています)。※亜鉛については、人でACE阻害薬により尿への排泄が増えると報告されています。

ここで、第2章を思い出してください。

心臓を動かしているのは、ナトリウム・カルシウム・カリウム・マグネシウムでした。

心不全のいちばん基本のお薬である利尿剤が、その4つすべてを、体から出してしまいます。

カリウム、マグネシウム、ナトリウムが減ることは、お薬の説明書に書かれています。当店が考えていることではありません。

カリウムだけは、逆向きの2つがあります

飲んでいるお薬によって、やるべきことが正反対になります。

  • 利尿剤(フロセミド・トラセミド)を飲んでいる子カリウムは減ります。足りなくなると、筋力が落ち、食欲が落ち、不整脈が出ます。
  • スピロノラクトン・ACE阻害薬・ARBを飲んでいる子/腎臓が弱っている子カリウムはたまります。たまりすぎると、不整脈や心停止を起こします。

ご自分の子がどちらなのかを、必ず確かめてください。 分からないときは、お薬の名前をお知らせいただければ、こちらで整理いたします。

マグネシウムは、ふつうの検査に入っていません

低マグネシウムがあると、カリウムをいくら補っても上がってきません。 第2章でお話しした、腎臓の出口の栓の話です。

不整脈も出やすくなります。そして問題は、ふつうの血液検査の項目に、マグネシウムが入っていないことです。(頼めば測っていただけますが、こちらから言わなければ、まず測られません)

検査に出てこないものは、足りていないことに誰も気づきません。

ビタミンB群のこと

ビタミンB群は、水に溶けます。余った分は、尿へ出ていきます。

とくにビタミンB1は、体に止めておける量がごくわずかで、毎日ごはんで補うしかありません。しかも熱と水に弱いので、加熱して作られたごはんでは、思うように残りません。

(※ビタミンB12のように、ある程度ためておけるものもあります。B群がすべて同じではありません)

そこへ、利尿剤が加わります。尿がたくさん出れば、水に溶けるビタミンも一緒に出ていきます。

ビタミンB1が足りなくなると、まず食欲が落ちます。 そして心電図に異常が出ます。

そして、B群はひとつでは働きません。ビタミンB6がなければ、心臓に欠かせないタウリンを作ることができません。ビタミンB2がなければ、そのB6が働ける形に変わりません。 B12と葉酸は、互いに組になって働きます。

だから当店は、B1だけ、B6だけ、ではなく、

「Bコンプレックス」としてごはんと一緒に食べていただくことが、いちばん安全だと考えています。

心臓の薬で体から出ていくものと、たまるもの。利尿剤とスピロノラクトン

第11章 ごはんで支える① ― 心臓の燃料と材料

タウリン

第3章でお話ししたとおりです。心臓の中の遊離アミノ酸の半分以上を占め、心臓をゆっくり働かせてくれる栄養素です。

ワンちゃんのフードには、加える決まりがありません。 だからこそ、補充しなければならない栄養素です。

L-カルニチン

心臓の筋肉は、主に脂肪を燃やして動いています。

その脂肪酸を、細胞の中のミトコンドリアへ運び込む「運び屋」が、L-カルニチンです。運び屋がいなければ、燃料があっても燃やせません。

体内でも作ることができますが、その量には限りがあります。年を重ねると、作る力も落ちてきます。

コエンザイムQ10

ミトコンドリアがエネルギーを作るときに、なくてはならない部品です。体の中でいちばん濃度が高いのは、心臓です。 次いで腎臓、肝臓、膵臓。体内でも作れますが、その力はやがて衰え、加齢とともに減っていきます。

人の心不全では、心臓の筋肉のコエンザイムQ10が枯渇していることが知られています。ワンちゃんでも、ある犬種の心不全で、心臓の筋肉のコエンザイムQ10が減っていたという報告があります。

オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)

ここは、国際的な指針がめずらしく栄養をすすめている箇所です。

食欲が落ちている、筋肉が減っている、不整脈があるワンちゃんでは、

オメガ3脂肪酸の補給を考慮する。

オメガ3とオメガ6は、主な役割が違います。

オメガ6から作られる物質には、炎症を起こし、体に「異常がある」と知らせるものが多くあります。オメガ3から作られる物質(レゾルビン、プロテクチンなど)には、起きてしまった炎症を、積極的に収束させる働きがあります。

どちらも必要です。 炎症が起きなければ体は危険に気づけず、収束させる力がなければ、炎症は終わりません。

★だから、量ではなく「割合」です。

オメガ3とオメガ6は、体の中で同じ酵素を取り合います。オメガ6が多ければ、その酵素はオメガ6の処理に使われ、オメガ3は順番が回ってきません。

人の栄養学では、現代の食事はオメガ6がオメガ3の20〜50倍とも言われ、望ましいのは4〜5倍程度とされています。(※ワンちゃん・ネコさんにとっての理想的な比率は、まだ定まっていません。AAFCOの基準では、オメガ6がオメガ3の30倍までです)

つまり、オメガ3を足すだけでは足りません。

オメガ6を減らすことが、同時に必要なのです。

当店は、オメガ9も含めて、お使いの油全体を見直していただくことをおすすめしています。

ここにも注意が要ります。「オメガ3を足そう」と油の量を増やせば、脂質そのものが増えます。 小さじ1杯がちょうど良い子もいれば、その量では消化不良を起こしてしまう子もいます。 必要な量は、その子によって違います。

心不全は、炎症の病気でもあるという見方があります。

心不全のワンちゃんで、炎症を起こす物質が増えていることが報告されています。

だからこそ当店は、炎症のもとになるものを、体に入れないことを大切に考えています。

第12章 ごはんで支える② ― 塩を減らしすぎない

「心臓が悪いから、塩分を控えてください」

そう言われて、一生懸命に塩を抜こうとなさる飼い主さんは、多いと思います。けれど、減らしすぎてはいけません。 これは当店だけの考えではなく、いまの獣医療も同じ方向を向いています。

段階によって違います

ステージA・B1=食事療法はすすめられていません(塩分の多いおやつや人の食べ物を避ける、という助言まで)。ステージB2・C=軽度の制限。ステージD=より強い制限。

心臓が悪いと分かった時点ですぐ減塩、とは言われなくなっています。

なぜ、減らしすぎてはいけないのか

強い減塩は、RAA系を強く働かせます。

RAA系とは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系という仕組みのことです。腎臓が「血圧が下がった」「塩と水が足りない」と感じ取ると、血管を締め、ナトリウムと水をため込ませる指令が次々に出されます。もともとは、出血などで血圧が下がったときに命を守るための仕組みです。

ところが心臓が弱っていると、この仕組みが働きっぱなしになります。心臓を楽にしようとしたことが、かえって心臓に負担をかける方向に働いてしまうのです。

当店の見方

ナトリウムは、体の水の量を決めています。足りなくなれば血液量が減り、腎臓を流れる血液も減ります。

老廃物を濾し出すには、流れる量が要ります。当店が「減らしすぎないで」と申し上げるのは、このためです。

もうひとつ、大切なことがあります。

AAFCOの基準を満たした総合栄養食は、はじめからナトリウムの量が決められています。私たち人間の食事とは、そもそも成り立ちが違うのです。(※おやつや、総合栄養食ではない食品は、この限りではありません)

塩分の摂りすぎが問題になる日本人の食生活と、同じように扱ってはいけません。

すぐに役立つこと

ナトリウムは、フードだけから入ってくるのではありません。おやつ。人の食べ物のおすそ分け。そして「お薬を飲ませるために使う食べ物」。

チーズやハム、ちくわでお薬を包む習慣は、想像以上の塩分になります。毎日のことですから、積み重なります。

ほかに置き換えられるものがないか、ぜひ探して差し上げてください。お困りのときは、ご相談ください。

減らせばよい、というものでもありません

ワンちゃんは、お水をよく飲みます。その分だけ、ナトリウムが足りなくなれば、補う必要が出てくる場合も考えられます。

「塩は減らせばよい」という一言では済みません。排除することがすべてではない、ということを、どうか覚えておいてください。

※当店が20年以上のご相談で見てきたことに基づく考えです。

カルシウムとマグネシウム

利尿剤を飲んでいる子では、カルシウムもマグネシウムも尿から出ていきます。血液検査でカルシウムが正常でも、体のカルシウムが足りていることにはなりません。

カルシウムが足りなくなると、体は骨を溶かして濃度を保つからです。検査の数値は正常のままで、足りていないことは出てきません。

カルシウムとマグネシウムは、吸収でも働きでも互いに関わり合っています。マグネシウムが足りないと、カルシウムも下がります。 セットでお考えください。

※腎臓のこと、カルシウムとリンのバランスのことは、犬猫フェレットの腎臓のためにでくわしくお話ししています。

第13章 既製品のフードだけでは足りない理由

「AAFCOの基準を満たした総合栄養食を食べさせているから、栄養は足りているはずです」

そうおっしゃる飼い主さんは、多くいらっしゃいます。けれど、その基準が何を意味しているか、ご存じでしょうか。

基準は「健康な子が、ふつうの毎日を送るための量」です

AAFCOの栄養基準は、実用的な最低量を定めたものです(カルシウムやリンなど、一部には上限もあります)。

基準が想定していないこと

AAFCOの最低量は、健康な動物が、ふつうの生活を送る場合を前提にしています。次のような子のことは、想定に入っていません。

  • 利尿剤を飲んでいる子 カリウム・マグネシウム・カルシウム・ビタミンB1が、尿から出ていきます
  • 下痢や嘔吐がある子 電解質と水に溶けるビタミンが失われます
  • 腸の状態が悪い子 タウリンが胆汁酸と一緒に失われ、再び吸収されません
  • 炎症がある子 消耗が増えます
  • 高齢の子 吸収する力も、カルニチンやコエンザイムQ10を作る力も落ちてきます

「足りている」という表示は、「その子にとって足りている」という意味ではないのです。

加熱で失われるもの

ビタミンB1は、熱と水にとくに弱いビタミンです。タウリンも、加熱で分解されうると報告されています(※一方で、押し出し成形では減らなかったという2024年の研究もあります。作り方の条件で大きく違うようです)。ビタミンCも加熱で失われやすくなります。

メーカーは、失われる分を見込んで配合しています。けれど、その見込みは平均に対するものです。 我が子の消耗に合っているかどうかは、別の話です。

そして、繰り返しになりますが、ワンちゃんのフードには、タウリンを加える決まりがそもそもありません。

第14章 血と、血管と、リンパ

血液の粘り

「血液がドロドロ」という言い方は比喩ではなく、実際に測ることのできる値です。

血液の粘り(粘度)は、血漿そのものの粘り、ヘマトクリット(血液に占める赤血球の割合)、そして赤血球が、どれだけしなやかに形を変えられるか、の3つで決まります。

3つめが大切です。赤血球は、自分より細い毛細血管を通るとき、体を折りたたむようにして通り抜けます。 しなやかさが失われると、細い血管を通れなくなります。

そのしなやかさは細胞膜の質に左右され、細胞膜を作っているのは脂肪酸とビタミンとミネラルです。

粘りが上がると、細い血管の流れが悪くなり、血管の内張りの働きが損なわれ、酸化ストレスが強まることが分かっています。

体の側が整えば、血液の流れ方も変わってきます。 当店は、そう考えています。

血管の内側

血管の内張りである内皮細胞は、一酸化窒素という物質を出して、血管をゆるめています。

酸化ストレスが強いと、この一酸化窒素が壊されてしまいます。すると血管はゆるみにくくなります。

心不全のワンちゃんで、炎症と酸化ストレスの関連が報告されています。

リンパのこと

毛細血管から、細胞と細胞のあいだにしみ出した水を「組織液(または間質液)」といいます。細胞に酸素と栄養を届けた組織液は、不要なものを回収して毛細血管に戻ります。

けれど、しみ出した水のすべてが血管に戻れるわけではありません。その戻れなかったぶんを回収しているのが、リンパ管です。

リンパ管の回収口は大きく開いているので、毛細血管では回収できない大きな物質も取り込めます。集められたリンパ液は、肩のあたりの静脈に合流して血液へ戻されます。

では、心臓が弱るとどうなるでしょうか。

心不全では、リンパの本流を流れる量が、正常の約8倍になります(人でのデータです)。ところが、心臓に戻る血管の圧が上がると、その出口が押されて、リンパが流れ込めなくなります。

汲み出す力がいちばん要るときに限って、出口が塞がれてしまう。

むくみやお腹の水は、心臓だけの問題ではありません。

水を回収して戻す道が、同時に渋滞しているのです。

第15章 空気 ― 僧帽弁は、肺から帰った血液が最初に通る扉

第1章で、ひとつだけ覚えておいていただきたいとお伝えしたことがありました。ここで戻ってきます。

肺から帰った血液は、まず僧帽弁を通ります

肺 → 肺静脈 → 左心房 → 僧帽弁 → 左心室 → 全身

これが、酸素を積んだ血液の道すじです。

肺で血液に入ったものが、体の中でいちばん最初に出会う扉は、僧帽弁です。

ここが大切なところです。お口から入ったものは、腸で吸収されたあと、まず肝臓で処理されます。肝臓という関所を通ってから、全身へ出ていくのです。

けれど、肺から血液に入ったものは、その関所を通りません。処理されないまま、いきなり心臓へ届きます。

三尖弁のほうは、全身から回収されてきた血液が通る扉です。腎臓へ運ばれるはずの老廃物を含んだ血液です。

2枚の扉は、入ってくるものと、出ていくはずのものの、両方にさらされ続けています。

この2枚の扉は、炎症の原因を最初に引き受けている場所と申し上げても過言ではありません。

吸い込んだ汚れは、肺のリンパ節に集まります

人のご遺体を解剖すると、肺のまわりのリンパ節は、ほとんどの方で真っ黒になっているといいます。呼吸で吸い込んだ排気ガスやチリが、そこに集められるからです。吸い込んだものは、消えてなくなるわけではないのです。

空気は、この15年で大きく変わりました

日本の空気(環境省の常時監視・全国の年平均)は、2010〜2014年度が横ばいで、2013年1月には一部の測定局で日平均が50 μg/m³を超えました。その後は下がり続け、2016年度 11.9 μg/m³ から、2022年度は 8.8 μg/m³・達成率99.9%になっています。

北京は、2013年の年平均 89.5 μg/m³・重度汚染58日から、2024年は 30.5 μg/m³(65.9%減)・2日まで下がりました。

2008年から2014年あたりが、いちばん悪い時期でした。

当店が見てきたこと

ここからは、当店の見方です。

当店は、空気がいちばん悪かった時期に合わせて、ワンちゃんの弁についてのご相談が増え、近年は減っていくのを見てきました。

ただし、正直に申し上げておきたいことがあります。

ネコさんとワンちゃんでは、心臓の壊れ方がそもそも違います(ネコさんは筋肉が厚くなる病気、ワンちゃんは弁が傷む病気が主役です)。

そのうえで当店は、外を歩くワンちゃんと家の中にいるネコさんとで、弁についてのご相談の数が、はっきり違うことを見てきました。

そして、家の中の空気です

「窓を閉めていれば安心」と思っていらっしゃいませんか。

台湾の大学の動物病院で、348頭(ワンちゃん230頭・ネコさん118頭)のお宅の空気を、実際に測った研究があります。

家の中にあったもの割合
調理の煙72.6%
受動喫煙32.9%
お線香17.1%
家庭用の化学薬品11.6%

この研究が調べたのは呼吸器の病気で、心臓ではありません。「家の中の空気が僧帽弁を傷める」とは、申し上げられません。それでも、知っておいていただきたい数字があります。

このとき測られた家の中のPM2.5は、27〜38 μg/m³でした。

北京の2024年の「外の空気」の年平均が、30.5 μg/m³です。

家の中が、それと同じくらいだったのです。

呼吸器にダメージがあるのなら、心臓や弁のトラブルは無関係にはなりません。

家の中でできること

香料入りの柔軟剤、芳香剤、消臭スプレー。お線香、ろうそく。タバコの煙。調理の煙。掃除の薬剤。

人でも「香害」として問題になっています。ワンちゃんの鼻は、私たちよりはるかに敏感です。調理の煙はもっとも多く見つかった汚染源ですので、換気扇を回してください。

そして、すでに心臓が弱っている子は、空気の汚れに弱いとされています。

「汚れた空気が弁膜症を起こす」と断定はできません。けれど、心臓を通り続けるものを減らすことに、意味がないはずがありません。

第16章 食べられること ― 痩せさせない

心臓が悪いと言われた子にとって、いちばん危ないのは、食べられなくなることです。

心不全のワンちゃんの48.3%に、筋肉の減少が見られました。そして、体重計だけでは分かりません。 理想的な体格でも、太っていても、筋肉は減っていることがあります。

飼い主さんがいちばん気づきやすいのは、後ろ足と、動き方です。ソファに飛び乗らなくなった。段差をためらう。すぐに座り込む。体重が変わらなくても、こうした変化は先に出ます。

もうひとつ、お薬が食欲を奪っていることがあります。

痩せてきている子では、カロリーを確保することを、塩分制限よりも優先する。

痩せは、治すよりも防ぐほうが、ずっと易しい。(国際的な指針より)

▶ 犬猫フェレットの心臓のために(食べられなくなる前に)

筋肉の減りに気づく方法、お薬と食欲の関わり、食べていただく工夫をまとめました。ネコさんの飼い主さんにも共通です。

第17章 酸素 ― 苦しくなってからでは、間に合いません

酸素室は、呼吸が苦しくなってから探すものではありません。

苦しくなってから探すと、届くまでの時間が、一層、辛い時間になってしまいます。

重い病気の子、シニアの子、そして多頭飼育のお宅は、先に用意しておいてください。

1回の呼吸で、より多くの酸素が入ってくれば、その分だけ心臓は楽になります。酸素室は、重篤なときだけのものではありません。気軽に普段使いしていただいて構いません。

生あくび。排尿・排便のあとのふらつき。食後のふらつきや動悸。咳。 こうしたサインは、酸欠のあらわれかもしれません。

▶ 犬猫フェレットの心臓のために(酸素室について)

借りる・買う方法、酸素の濃度、お家で作る方法、★安全のための注意、通院のあいだのこと、酸素をイヤがる子への工夫を、このページにまとめました。安全に関わる大切な注意が書いてあります。お使いになる前に、必ずお読みください。

第18章 心臓と腎臓 ― 綱渡りを楽にできるもの

心臓の話をしていると、必ず腎臓が出てきます。この2つは、切り離せません。

何が起きているか

心臓の送り出す力が落ちると、腎臓を流れる血液が減ります。 すると腎臓の働きも落ちます。

同時に、静脈の側の圧が上がって腎臓がうっ血することでも、腎臓は傷みます。そして、利尿剤は、この状況をさらに悪くすることがあります。

腎臓に届く血液が減って、腎臓の数値が上がります。その状態が長く続けば、腎臓の組織そのものが傷むこともあります。

ただし、「利尿剤は腎臓に悪い」と単純に申し上げるつもりはありません。

うっ血が取れることで、かえって腎臓の数値が良くなることもあります。問題は、お薬そのものではなく、量の加減です。

綱渡りです

利尿しすぎれば、腎臓が傷みます。足りなければ、心不全が再発します。 獣医さんは、この細い綱の上で、いつも量を決めていらっしゃいます。

けれども、使い続けるうちに、その子の体の状態が変わっていることが後回しになり、「いつもの処方」が優先されてしまうこともあります。

体調の変化は、飼い主さんにしか分かりません。新しくお薬を受け取られるときは、小さな変化も漏らさず先生にお伝えして、 そのときの体に合った処方をお願いしましょう。

その綱渡りを楽にできるのは、体の側の状態です。

脱水させないこと。電解質を切らさないこと。食べられる状態を保つこと。

これは、お薬にはできません。ごはんにしかできないことです。

手術という選択肢もあります

日本は、ワンちゃんの僧帽弁形成術がもっとも多く行われている国のひとつです。年間200例を超える施設もあり、体重1.3kgのチワワの手術例も報告されています。

すすめる、すすめないを当店が申し上げることではありません。けれど、そういう選択肢があることを知らないまま選べないでいることは、いちばん避けたいと考えています。

と同時に、こうした選択をなさるのであれば、そのリスクに備える準備が必要です。先生任せにせず、どこまでも飼い主さんの知恵と工夫で乗り切ることを、考えて差し上げてください。

お迷いの際は、ご遠慮なくお声がけください。

むすび 今、この瞬間も

心臓は、あなたがこのページを読んでいる、この瞬間も打ち続けています。

「心臓が悪い」と言われた日から、飼い主さんは、何もできない気持ちになってしまいがちです。お薬を飲ませることしか、できることがないように思えてしまいます。そんなことはありません。

できることは、4つです。

  1. 寝ている我が子の呼吸を数えて、書き留めること道具も費用も要りません。獣医さんより先に気づけます。
  2. 心臓を動かしているものを、切らさないことナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム。タウリン。ビタミンB群。 利尿剤は、そのいくつかを体から出してしまいます。
  3. 食べられる状態を、守ること痩せは、治すより防ぐほうが、ずっと易しいのです。
  4. そして、1から3を手に入れるには、ニンナナンナ流のケアが必要です
    そこは、私たちがお手伝いします。

先天性であっても後天性であっても、「今、この瞬間も頑張っている我が子の心臓」を、慈しみ、育んでいくことはできます。

生まれつきだから、罹りやすい種族だから ―― そう言われて、あきらめる必要はありません。

迷われたときは、いつでもご連絡ください。検査の数値も、お薬の名前も、そのままお知らせいただければ、一緒に読み解きます。通院が難しいときも、ご相談ください。

※フィラリアについては、「ナンナさんのノート」に別のページを設けます。気長にお待ちください。

このページで、ご紹介している栄養素

足りなくなりやすい理由=加熱や加工で失われる/お薬を飲んでいると尿から出ていく/食欲が落ちて、そもそも入ってこない/腸の状態が悪く、吸収しきれない/年齢とともに、体で作る力が落ちる。

食事内容を整えるときに、意識していただきたいこと

  • 毒になるものは、いかなるものも1mmたりとも取り込ませない。 食材とサプリメントの品質確保が重要です
  • ビタミン・ミネラル全般が不足しがちです。 とくにビタミンB群、カルシウム、マグネシウム、タウリン
  • ドライフードのみの場合は、可能な限り良質な総合栄養食のウェットフードに
  • 消化の良い炭水化物と食物繊維を、ごはんに組み込んでください
  • 良質で浸透性の高いお水を、しっかり飲みましょう
  • 肝臓、腸、腎臓など、ほかに心配事がある場合は、同時にごはんを見直します

何を、どれだけ、どう組み合わせるか。迷われたときは、ご遠慮なくお声がけください。

心臓のためのサプリ・フード

これらは治療薬ではなく、獣医さんの治療に代わるものではありません。持病があったり、治療中のお薬がある場合は、原材料と使い方をご確認のうえ、かかりつけの先生にもご相談ください。

サプリメントに関するアンケート




*NinnaNanna(ニンナナンナ)では、シッポを持つ家族の総称としてシッポちゃんと呼びます。
また 犬 をワンちゃん、猫 をネコさんと敬意を以て表現しています。



ご希望の個数を指定して「まとめてカートへ」ボタンをクリックしてください。
表示切替: 並び順:
20件中1件~20件を表示

商品一覧

NinnaNannaDelica/猫用・犬用/ビタミンBコンプレックス

¥1,716(税込) ~

NinnaNannaDelica/猫用・犬用/ビタミン・ミネラル+アミノ

¥3,231(税込) ~

NinnaNannaDelica/猫用・犬用/NMN原末

¥1,537(税込) ~

NinnaNannaDelica/猫用・犬用/MSM

¥2,133(税込) ~

NinnaNannaDelica/フェレット用/アルティジャーノ液体酵素

¥1,652(税込) ~

MRN-100 高機能π(パイ)ウォーター/フェレット用・人用

¥886(税込) ~

フルーツザイム/フェレット用

¥3,600(税込) ~

NinnaNannaDelica/猫用・犬用/ニンナナンナ・ブースト

¥1,196(税込) ~

ニューサイエンス/猫用・犬用・人用/マルチミネラルビタミン/180カプセル

¥9,504(税込)

購入数 個

【セール】ニンナナンナ デリカ/猫用・犬用/カルシウム

通常価格: ¥762(税込) ~

価格: ¥534(税込) ~

SPIRITa(スピリッタ)天然タウリン/猫用・犬用

¥671(税込) ~

ルンブルQ/猫用・犬用・人用/60粒

¥12,960(税込)

購入数 個

MRN-100 高機能π(パイ)ウォーター/猫用・犬用・人用

¥886(税込) ~

健康茶タヒボNFD/ニューティーバッグ/5g×30包

¥21,600(税込)

購入数 個

波動水/猫用・犬用・人用/バイオスO2-S/2L/1本

¥1,805(税込)

購入数 個

ストレリチアK(旧商品名:Charge-K)/猫用・犬用/50g

¥12,430(税込)

購入数 個

フルーツザイム/猫用・犬用

¥3,600(税込) ~

NinnaNannaDelica/猫用・犬用/アルティジャーノ液体酵素

¥1,652(税込) ~

C&R/猫用・犬用/ビタミンBコンプレックス

¥1,298(税込) ~

アズミラ/猫用・犬用/テイスティービタミンミックス

¥3,421(税込) ~

20件中1件~20件を表示

ナンナさんのコラム

フード以外の商品は、
ネコちゃん・ワンちゃん・フェレットちゃん共通です。
お迷いの際はご遠慮なくご相談ください。

除去食をお探しの方へ 取り扱いキャットフードの主原料一覧を公開しています。
海外発送も承ります!
大気汚染チェック シッポたちへの影響はワンランク上げてお考えください。

カレンダー
  • ■今日
  • ■定休日

定休日
■火曜日・日曜日
※発送業務とメール返信はお休みします。
※電話ご相談のみお受けします。

【営業時間】
営業日 10時~20時

【当日発送締切時間】
営業日の午前中まで