ヴォルカーノの主成分：リモナイトとは・・・・・


リモナイトとは「褐鉄鉱」「沼鉄鉱」と呼ばれ、沼地や浅い海などの鉄分を多く含む水が空気に触れ、
沈殿作用がおき、その沈殿した黄土のことを呼びます。



地球上では同様の物質が諸外国でも発見されていますが、
日本国内で良質のリモナイトが採掘できるのは、唯一、熊本の阿蘇に限られます。



どうして阿蘇の山の中でそのような産物が生まれたのでしょうか？




リモナイトが阿蘇で採ることが出来る理由は、世界一のカルデラを有する阿蘇の歴史と大地にあります。






熊本：阿蘇について・・・・・

阿蘇は典型的な二重式の火山で、カルデラと中央火口丘で構成され、
高岳、中岳、根子岳、烏帽子岳、杵島岳が阿蘇五岳と呼び、
外輪山や火口原をも含めた総称として阿蘇山と呼ばれています。

最高点は高岳の標高1592m。カルデラは南北25km、東西18kmに及び面積380km2と広大です。

　


阿蘇は、30万年前、11万年、前9万年前と大噴火を経験し、
これらの噴火により阿蘇山と外輪山との間に大きな火口湖が出来たと言われています。
根子岳は最も古くカルデラ形成前からあったものであると推定されています。



火口湖にはマグマや植物といった様々な有機物が蓄積され水中で分離分解されました。

やがて、湖は干上がり、火口湖は大きなカルデラとなって今の姿となり、
取り残された様々な成分が堆積物として浸透し、やがて地層となり地下に眠ることになります。
阿蘇黄土（リモナイト）はこの堆積層にから採掘されています。




阿蘇黄土（リモナイト）の歴史・・・・・

リモナイトは「阿蘇黄土」という名で阿蘇の人々に古くから親しまれていました。

「阿蘇黄土（リモナイト）」の魅力に魅せられた一人が邪馬台国の女王「卑弥呼」でした。



倭王：卑弥呼から、魏へ贈られた献上品に「丹」が名を連ねている記録が今も残っています。

「丹」とは、倭国の人々に「献上品」や「呪術の儀式」「日常の装飾」幅広く用いられていた
鉄丹＝「ベンガラ」を意味しています。

　リモナイトは熱することで朱色に変わる特徴を持っており「ベンガラ」と呼ばれています。
　ベンガラは防虫・防腐効果があることから、古くは鳥居の装飾品、陶器や棺などの塗料として、
　現在でも家屋の塗料や、最古の彩色用顔料としても使用されています。

中国では「不老不死の秘薬」として「丹」を珍重し活用していたと言われています。

阿蘇町一帯にある弥生時代の古墳から、石室や石棺から大量のベンガラ「鉄丹」が発見されました。
この膨大な量のベンガラを、古代の人々はどこで手に入れたのでしょうか。
それこそが、阿蘇の大自然の恵み「阿蘇黄土（リモナイト）」でした。

こうしたことから、「邪馬台国の九州説と魏志倭伝」 や 「弥生時代の古墳から発見されたベンガラ」 と
「阿蘇黄土（リモナイト）」 は、深く関わっているという説も唱えられています。


また、リモナイトは貴重な鉄資源として、福岡の八幡製鉄所に運ばれ「鉄」として生まれ変わりました。
これをきっかけに大量のリモナイトを日本全国に送ったという歴史もあります。



一方で、阿蘇黄土（リモナイト）は地域・環境にも深く関わります。




阿蘇黄土（リモナイト）と地域・環境との関わり・・・・・



「韓牛」を起源とする「赤牛」は、昭和19年に固有種/和牛として登録され、
「くまもとあか牛」として、阿蘇地方では豊かな草資源を活用した放牧が行われています。
あか牛は、耐寒・耐暑性に優れており、放牧に適し、性格がおとなしく飼育しやすいという特性があり、
肉質は赤身が多く、適度の脂肪分も含み、うま味とやわらかさ、ヘルシーさを備えています。

この赤牛たちが下痢をしたときや体調が悪いときに、
リモナイトを食べさせて体調を整えていたという話が残っています。
阿蘇市狩尾の工場には、牛飼いなどがよく黄土をもらいに来ていたとも伝えられています。

こんな風に、経験として知られていたリモナイト効果ですが、
そのヒミツが少しずつ分かってきています。

リモナイトの主成分は、酸化第一鉄で非常に不安定な状態で存在しています。
その不安定な分子は他のものと結びつき、安定しようとする特徴があります。


　これがリモナイトの秘めた力「吸着力」です。

　動物の体内や、空気中、水の中でもこの吸着力は
　驚くほどの効果をあらわします。

　また、鉄分などの天然ミネラル成分を活用し、
　現在では、地元の赤牛に止まらず、
　日本各地の養豚場で豚が食べる飼料添加剤として
　豚の健康維持や、肉質改善などのために使用されています。



また、鉄分をはじめとしたミネラル分を多く含んだリモナイトは、
みかんなどのかんきつ類や花、野菜にいたるまで様々な植物に大変良い効果を与えると言われています。

こうしたガスの吸着剤としての効果は、下水処理場などで発生する硫化水素ガスの
吸着剤「脱硫剤」として活用されています。




雨が降った際にリモナイトが川などに流れ込んで赤く見えることから
「赤水」という地名を持つ地域もあるほど、リモナイトは古代から現代を通じて、
阿蘇地域の環境・暮らしと密着しています。