症状別サプリメント/脳のために


脳のために ― よくある脳の病気と、お薬のこと

脳のために ― 4つのページでお話しします
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病名とお薬の前に、知っておいていただきたいこと

「てんかんですね。お薬を始めましょう」「認知症でしょう。年齢的なものです」「脳の検査をするなら、MRIですね。全身麻酔が必要です」

脳の症状で病院へ行くと、こうした言葉をかけられます。飼い主さんは、病名の重さと、検査の大きさと、お薬の説明を、一度に受け止めなければなりません。不安の中で、言われるままにお薬を飲ませ始め、やがて種類や量が増えていく。当店には、そうした飼い主さんからのご相談が、数多く寄せられます。

このページでは、ワンちゃん・ネコさんに多い脳の病気と、そこで使われるお薬について、分かっている事実をお伝えします。

  • どんな病気が、どのくらいあるのか
  • その病気では、どんな検査とお薬が使われているのか
  • そのお薬は、ワンちゃん・ネコさんのために作られたものなのか
  • どんな副作用があり、からだの何を乱すのか
  • お薬を減らしていくには、どうすればよいのか

病名がついても、検査を勧められても、お薬を出されても、決めるのは飼い主さんです。 獣医さんは「できること・できないこと」を示す側です。飼い主さんが、事実を知ったうえで選べるように。このページは、そのためにあります。

多い脳の病気の早見図。特発性てんかん・ネコさんの発作・低血糖発作・認知機能不全・前庭疾患・脳梗塞と脳出血・高血圧性脳症・脳炎・脳腫瘍・水頭症・キアリ様奇形の、多い子とお家で見える主な症状

第1章 ワンちゃん・ネコさんの脳の病気は、どのくらいあるのか

日本のペット保険の大きな集計では、病気の分類ごとの請求の割合で、神経の病気はワンちゃんで3.4%、ネコさんで0.7%でした。15の分類のうち、ワンちゃんで12番目、ネコさんで13番目です。数で見れば、多い病気ではありません。

けれども、全国40の動物病院で亡くなった子の死因を調べた報告では、ワンちゃんの死因の5番目が、神経の病気(9.0%)でした。数は多くなくても、命に関わる病気が含まれているのです。

病気多い子お家で見える主な症状
特発性てんかんワンちゃん。6か月〜6歳で始まることが多い全身のけいれん。体の一部のぴくつき・よだれ・ぼんやり。発作のあとのふらつき・空腹
ネコさんの発作年齢とともに増える顔のぴくつき・よだれ・急に走り出す。高齢では高い音でびくっとする発作
認知機能不全(いわゆる認知症)高齢のワンちゃん・ネコさん夜鳴き・昼夜逆転・徘徊・狭い所で動けない・トイレの失敗
前庭疾患高齢のワンちゃん。ネコさんは中耳炎から首の傾き・目が揺れる・ふらつく・転がる・吐く
脳梗塞・脳出血腎臓・副腎・甲状腺・心臓の病気や高血圧がある子急に始まり、それ以上は悪くならない、片側に偏った症状
脳炎(MUO)若い〜中年の小型犬。パグ・チワワ・マルチーズなど発作・ぐるぐる回る・性格の変化・ふらつき。急に進むことがある
脳腫瘍中高齢のワンちゃん・ネコさん中高齢になって初めての発作・性格の変化・頭を押しつける
水頭症チワワなどの超小型犬頭が丸く大きい・覚えが遅い・発作・斜視
キアリ様奇形・脊髄空洞症キャバリア首や肩を空中で掻く・首を触られるのを嫌がる・急に鳴く
高血圧性脳症高齢のネコさん。腎臓病・甲状腺機能亢進症発作・ぼんやり・急に目が見えない・ふらつき
低血糖発作フェレットちゃん(インスリノーマ)ぼんやり・よだれ・前足で口をかく・後ろ足の力が抜ける

「てんかんが増えている」「認知症が増えている」とよく言われます。年ごとに割合が上がったことを示す統計は、ワンちゃん・ネコさんでは見つかりませんでした。確かなのは、寿命が延び、高齢の子が増えたことです。認知症は年齢とともに急に増え、ネコさんの発作も高齢で増えます。高齢の子が増えた分、こうした病気に出会う飼い主さんが増えているのは、間違いのないことだと考えています。

第2章 てんかん

てんかんとは

てんかんは、発作を起こしやすい状態が続く脳の病気です。低血糖や中毒などのはっきりした引き金のない発作が、24時間以上あいて2回以上起きたときに、てんかんと考えます。

国際的な獣医のてんかんの専門家の会(国際獣医てんかん特別委員会)は、発作を原因によって3つに分けています。

  • 特発性てんかん
    脳に目に見える炎症(傷)がなく、ほかの原因も見つからない。遺伝が関わると考えられている。
  • 構造的てんかん
    脳炎・脳腫瘍・水頭症・脳の血管の病気など、脳そのものに炎症(傷)がある。
  • 反応性発作
    脳は正常で、低血糖・中毒・アンモニアなど、からだの中の異常に脳が反応して起きる。原因を取り除けば止まる。てんかんではない。

反応性発作の原因(低血糖・肝臓・腎臓・カルシウム・中毒・お薬など)と、心臓の失神との見分け方は、「脳のしくみと、脳を傷めるもの」のページでくわしくお話ししています。

発作のかたち

  • 焦点性発作
    体の片側や一部がぴくつく。よだれ・瞳孔が開く・吐く、などが出る。急におびえる、見えない何かを追う、などの行動の変化だけのこともある。
  • 全般発作
    全身が突っ張る、がくがくと震える。意識がなくなる。
  • 焦点性から全般発作に移るもの
    ワンちゃんでいちばん多いかたち。

発作の前には、数時間〜数日前から、落ち着きがない・甘える・隠れる、などの前ぶれが出る子がいます。発作のあとには、数分から長いと数日、ふらつく・ぼんやりする・目が見えにくい・とてもお腹がすく、などの発作のあとの時間が続きます。

ワンちゃんのてんかん

ワンちゃんのてんかんは、100頭に1頭いないくらい(0.6〜0.75%)と推定されています。英国の一般の動物病院の大きな記録では、1年間に新しく発作を起こしたワンちゃんは0.62%で、最初の発作の年齢の真ん中の値は6歳でした。パグは、ラブラドールの3.41倍、発作を起こしやすいとされています。

日本の大学病院で、てんかんのワンちゃん358頭を調べた研究があります。

  • 特発性てんかん 172頭(48.0%)
  • 構造的てんかん 76頭(21.2%)
  • 検査が足りず分けられなかった 110頭(30.7%)

著者は、構造的てんかんの原因に脳炎(MUO)が多いことを挙げ、日本に小型犬が多いことと結びつけています。

そして、この研究には、希望のある結果もありました。追跡できた特発性てんかんのワンちゃん65頭では、発作がよく抑えられていれば、寿命は一般のワンちゃんに近かったのです(寿命の真ん中の値13.5歳)。寿命を縮めていたのは、発作が多いこと(月0.3回以上)と、焦点性発作でした。

ネコさんの発作

ネコさんの発作は、ワンちゃんより少なく、英国の記録では、1年間に発作をくり返したネコさんが0.16%、「てんかん」と記録されたのは0.04%でした。年齢が上がるほど増えます。ネコさんでは、ワンちゃんより、脳そのものに原因がある割合が高いとされています。

ネコさんに特徴的な発作もあります。

  • 高い音で起きる発作
    レジ袋のカサカサ、金属がふれあう音、キーボードの音などで、びくっとしたり、けいれんしたりする。始まる年齢の真ん中の値は15歳。バーマンに多く、半数は耳が遠くなっていた。
  • 頭がピクッとする発作
    高齢のネコさんで、頭が小さくピクッと動く。
  • 甲状腺の病気から来る発作のような動き
    甲状腺機能亢進症のネコさん7頭で、手足が勝手に動く発作のような動きが、甲状腺の手当てで全頭消えた。

高齢のネコさんで発作が始まったら、甲状腺・血圧・腎臓のことも、あわせて考えてください。

第3章 発作が起きたとき、お家でできること

発作を初めて見た飼い主さんは、ほとんどの方が、何もできなかったとおっしゃいます。それで当たり前です。けれども、飼い主さんが見ていたこと・記録したことが、そのあとのすべての判断の土台になります。

発作が起きたとき。やることは、時計を見る・動画を撮る・周りを安全にする・部屋を暗く静かにするなど。やってはいけないことは、口に手を入れる・体を押さえつける・発作の直後に口に物を入れる。5分以上続く・意識が戻らないまま次の発作・1日に何度もくり返すときは、すぐに病院へ

やること

  • 時計を見る
    発作が始まった時刻と、終わった時刻を確かめる。5分が、急ぐかどうかの境目になる。
  • 動画を撮る
    発作のかたち(焦点性か全般か)が、言葉で説明するよりずっと正確に伝わる。
  • 周りを安全にする
    階段・段差・水回り・家具の角から離し、周りの物をどける。
  • 部屋を暗く、静かにする
    刺激を減らす。高い音で起きるネコさんでは、音そのものが引き金になる。
  • 発作のあとを見守る
    ふらつき・見えにくさ・空腹・落ち着きのなさは、しばらく続くことがある。
  • 24時間に何回あったかを数える
  • 直前に口にしたもの・つけた薬を確かめ、包装を残す

やってはいけないこと

  • 口に手を入れる、舌を引き出そうとする
    意識のないまま強く噛まれ、飼い主さんが大けがをする。発作の間に舌を飲み込むことはないとされている。
  • 体を押さえつける、揺さぶる、大きな声で呼ぶ
    発作は止まらず、けがのもとになる。
  • 発作の直後に、食べ物・水・お薬を口に含ませる
    飲み込む力が戻っていないと、むせて気管に入る。

急ぐ発作

安全メモ:すぐに病院へ

発作が5分以上続くとき。発作が終わっても意識が戻らないまま、次の発作が起きるとき(発作の重積)。
長く続く発作は、それだけで脳を傷め、命に関わります。
すぐに病院へ。通院できない場合は、ご連絡ください。

短い発作が1日に何度もくり返す(群発発作)ときも、早めの手当てが必要です。群発をくり返したことのある子は、お家で使える発作止めの頓服薬を、前もってかかりつけの先生と相談しておく、という方法もあります。

いっぽう、1回だけで短く、すぐに元に戻った発作では、すぐに長く飲むお薬を始めず、様子を見ることも多いのです。英国の一般の動物病院では、発作を起こしたワンちゃんの約7割が、抗てんかん薬を使わずに様子を見ていました。お薬を始める目安は、第8章でお話しします。

発作の記録をつけてください

  • 日付と時刻
  • 続いた長さ
  • 発作のかたち(動画)
  • 前ぶれと、発作のあとの様子
  • 直前の食事・おやつ・お薬
  • その日の天気・気圧・季節の変わり目・来客や物音などのきっかけ

当店では、低気圧の日や季節の変わり目、空気の汚れた日に発作が重なる子を、たくさん見てきました。記録を続けると、その子の発作の「起きやすい条件」が見えてきます。この記録は、お薬を始めるか決めるとき、そしてお薬を減らしていくときに、いちばん頼りになる道しるべになります。

第4章 認知機能不全(いわゆる認知症)

どんな症状か

ワンちゃん・ネコさんの認知症は、獣医学では認知機能不全と呼ばれます。症状は、次の6つの変化にまとめられています。

  • 場所や時間が分からなくなる
    家の中で迷う。壁や部屋の角で動けなくなる。ドアの開く側が分からない。
  • 家族との関わりの変化
    甘えなくなる。逆に、べったり離れなくなる。怒りっぽくなる。
  • 眠りと目覚めの乱れ
    昼に眠り、夜に起きる。夜鳴き。夜の徘徊。(夕方や明け方に活動する、薄明薄暮性の本能が表に出てくる、と当店は考えています)
  • トイレの失敗、覚えたことを忘れる
  • 活動の変化
    目的もなく歩き回る。同じ所をぐるぐる回る。逆に、動かなくなる。
  • 不安
    ひとりにされると鳴く。物音におびえる。

ネコさんでは、これに鳴き声が増えることが加わります。

どのくらいあるのか

  • ワンちゃん
    米国の約1万5千頭の調査で、1歳年をとるごとに、認知機能不全になる見込みが約1.5倍になっていた。同じ年齢・健康状態でも、ほとんど運動しないワンちゃんは、よく運動するワンちゃんの6.47倍多かった(運動しないから認知症になるのか、認知症だから動かないのかは、この研究では区別できない)。オーストラリアの調査では、認知機能不全に当たる高齢のワンちゃんのうち、獣医さんに診断されていたのは、わずか1.9%だった。
  • ネコさん
    11〜14歳の約3割、15歳以上の半数以上に、高齢になってからの行動の変化が少なくとも1つあると報告されている(すべてが認知症という意味ではない)。

ネコさんの夜鳴きは、認知症とは限らない

英国で8歳以上のネコさん549頭の健康診断をした研究では、甲状腺機能亢進症が19.2%、腎臓病が11.4%、高血圧が7.1%見つかりました。

甲状腺機能亢進症では、落ち着きがなくなり、夜に鳴きます。高血圧では、ぼんやりし、方向が分からなくなり、夜に鳴きます。痛みや、目や耳の衰えでも、夜鳴きは起きます。

認知機能不全は、生きている間に確かめる検査がなく、ほかの病気を除いて考える病気です。高齢のネコさんの夜鳴きを「年だから」「認知症だから」で片づける前に、甲状腺・腎臓・血圧を確かめていただきたいのです。

使われているもの

  • お薬
    セレギリンというお薬が、海外にはワンちゃんの認知機能不全に承認されている国がある。日本では動物用の承認はなく、人のお薬が使われる。ネコさんの認知機能不全に承認されたお薬はない。
  • ごはん
    高齢のワンちゃんで、中鎖脂肪(MCT)を加えたごはんや、抗酸化の栄養を強化したごはんで、学習の課題の成績が良くなった研究がある。くわしくは「正しく食べて脳を守る」のページでお話しします。
  • 毎日の刺激
    散歩、新しい場所、遊び、簡単な課題。高齢のワンちゃんの研究では、抗酸化のごはんと、遊びや学びの環境を組み合わせたときに、いちばん良い結果が出ていた。害がなく、今日からできることです。

第5章 前庭疾患 ― 首が傾く・目が揺れる・立てない

ワンちゃん

高齢のワンちゃんが、ある日突然、首が傾き、目が揺れ、立てなくなる。飼い主さんは「脳卒中だ」と思われることが多いのですが、多くは前庭疾患です。前庭とは、耳の奥にある、からだの傾きを感じる仕組みのことです。

英国の一般の動物病院の約90万頭の記録では、前庭疾患は1万頭に8頭。見つかったときの年齢の真ん中の値は12.7歳でした。

  • 首の傾き 69.8%
  • 目の揺れ(眼振) 68.0%
  • ふらつき 64.4%

フレンチ・ブルドッグ、ブルドッグ、キャバリアに多く見られました。キャバリアは、小脳の脳梗塞が多い犬種でもあります(第6章)。同じ「首が傾く」でも、脳の血管から来ていることがあるので、片側の手足の力の入りにくさや、ほかの病気がないかも、あわせて見てください(この章の「脳梗塞と、見た目では見分けられない」)。

見た目は激しくても、良くなっていく子が多い病気です。改善が記録されたワンちゃんでは、良くなり始めるまでの真ん中の値は4日でした。1か月以上首の傾きが残ったのは9%、ぶり返したのは10.3%です。

見た目の激しさに、飼い主さんは「もうだめかもしれない」と思ってしまわれます。けれども、数日で良くなり始めることの多い病気です。慌てずに見守っていただきたいのです。

目が回って吐き気が強いあいだは、ごはんを食べられないことがあります。水分を保つことを、まず考えてください。

ネコさん

ネコさんで同じ症状が出たときの原因は、中耳炎(耳の奥の炎症)がいちばん多く、次が原因の分からないものです。顔の片側が動かない、瞳の大きさが左右で違う・瞬膜が出る(ホルネル症候群)、といった症状があれば、中耳の病気を考えます。追跡できた104頭のうち、回復しなかったのは4頭でした。

脳梗塞と、見た目では見分けられない

同じ症状は、小脳や脳幹の脳梗塞でも起きます。片側の手足に力が入りにくい、意識がぼんやりしている、腎臓・副腎・甲状腺・心臓の病気や高血圧がある、前にも急に始まって良くなったふらつきがあった。そうしたときは、脳の血管のことも考えに入れてください。

第6章 脳梗塞と脳出血

ワンちゃん・ネコさんにも、脳の血管が詰まる脳梗塞と、破れる脳出血があります。MRIが広まって、ワンちゃんでは「以前考えられていたより多い」とされるようになりました。

特徴

  • 急に始まり、数分〜数時間で症状がそろう
  • 24時間を過ぎると、それ以上ほとんど悪くならない
  • 片側に偏る(片側のふらつき・首の傾き・片側の目の反応の低下など)

ワンちゃん

  • 体の大きさで、詰まる場所が違う
    15kg以下の小型犬は小脳の大きな梗塞、15kgを超える大型犬は脳の奥(視床・中脳)の小さな梗塞が多い。
  • 多い犬種
    グレーハウンドは、ほかの犬種の6.6倍。キャバリアも多い。
  • 背景の病気
    33頭のうち18頭に、ほかの病気があった(腎臓病8頭・副腎の病気6頭)。125頭の調査では約4割で、高血圧が2割、尿にたんぱくが漏れる腎臓の病気が1割近く。
  • 見通し
    125頭のうち、退院できなかったのは6.4%。多くの子は、最初の1か月で大きく良くなり、1〜3か月でほぼ元どおりに動けるようになる。ただし、2割近くの子で再発が疑われ、1割近くの子に、あとからてんかん発作が出ていた。

ネコさん

報告はまだ少ないのですが、MRIで脳梗塞とされた9頭のうち8頭に、ほかの病気がありました。亡くなったあとに脳を調べた16頭では、梗塞が12頭、脳出血が4頭で、梗塞のネコさんの中に甲状腺機能亢進症の子が3頭いました。心臓の病気(肥大型心筋症)では、心臓の中にできた血の塊が足の血管に詰まることがよく知られていて、脳に詰まったと考えられる報告もあります。

ネコさんの脳への血の流れ方は、ワンちゃんや人と違います。首の太い動脈が大人になると細くなり、顎の動脈が作る網の目のような血管から、主に血液を受け取っているのです。この特別なつくりが、ネコさんの脳の血管の病気の起こり方に関わっているのではないかと考えられています。

脳の血管を守るには

脳梗塞の背景にある病気(腎臓・副腎・甲状腺・心臓・高血圧)を見つけて手当てすることは、勧められています。ただ、それで脳梗塞の発症やぶり返しが減るかを確かめた研究は、ワンちゃん・ネコさんでは、まだありません。血の塊を作りにくくするお薬も、ネコさんの足の血栓では効果が示されていますが、脳梗塞のぶり返しを防ぐかは調べられていません。

だからこそ当店は、病気が見つかってからではなく、腎臓・甲状腺・心臓・血圧を、ふだんのごはんと暮らしで支えておくことが、脳の血管を守るいちばんの近道だと考えています。

第7章 脳炎・脳腫瘍・水頭症・キアリ様奇形

脳炎(MUO)

原因の分からない脳と脳を包む膜の炎症を、まとめてMUOと呼びます。パグの壊死性髄膜脳炎(いわゆるパグ脳炎)も、この仲間です。

  • 多い子
    若い〜中年の小型犬(見つかったときの年齢の真ん中の値は4.3歳)。パグ・チワワ・マルチーズ・ヨークシャー・テリア・ペキニーズ・シーズー・フレンチ・ブルドッグなど。英国の調査では、マルチーズはほかの犬種の20.5倍、鼻の短い犬種は2.56倍だった。
  • 日本では
    チワワで、免疫の型との関わりが調べられている。日本のてんかんの研究でも、脳に原因があるてんかんの原因に、MUOが多かった。
  • 症状
    発作、ぐるぐる回る、性格の変化、ふらつき、首の痛み。急に進むことがある。
  • 診断
    MRIと脳脊髄液の検査。
  • 治療
    ステロイド(プレドニゾロン)で免疫を抑えるのが基本で、そこに免疫抑制剤(シクロスポリン)や抗がん剤(シタラビン)を組み合わせることが多い。ただ、69頭を2つに分けた比較の試験では、ステロイドに抗がん剤を加えても、加えなかった子と比べて、100日の時点の治療の成績にも生存にも、はっきりした差はなかった。

MUOの治療では、ステロイドを長く使うことが前提になります。ステロイドの副作用(後でお話しします)と、どう付き合うかが大切になる病気です。

脳腫瘍

  • ワンちゃん
    亡くなったあとに調べた子の約2〜4.5%に、頭の中の腫瘍があった。脳から生じる腫瘍の約半分が髄膜腫、約3分の1が神経膠腫。神経膠腫は、ボクサー・ボストン・テリア・ブルドッグなど鼻の短い犬種に多い。
  • ネコさん
    亡くなったあとに調べた子の2.2%。いちばん多いのは髄膜腫で、ゆっくり大きくなる。ぼんやりする・行動が変わる、だけのこともある。

中高齢になって初めての発作、性格の変化、ぐるぐる回る、頭を壁に押しつける、片側の目が見えにくい。こうした症状のときは、脳腫瘍も考えます。

脳腫瘍の種類を確かめるには、腫瘍の組織を取って調べる必要があります。MRIで分かるのは、場所と形から「どんな腫瘍らしいか」という推定までです。脳の組織を取る検査は危険を伴い(ワンちゃんのある報告では、評価できた19頭中1頭が、検査のあとの頭の中の出血で亡くなっていました)、多くは推定のまま、手当てを考えることになります。

手当ての選択肢は、次のとおりです。

  • 症状を和らげる飲み薬
    ステロイドで脳のむくみを抑え、抗てんかん薬で発作を抑える。ふつうは、腫瘍そのものを治す手当てではない。ステロイドや抗てんかん薬で過ごしたワンちゃん51頭の報告では、退院してからの生存の真ん中の値は約69日で、脳の後ろ側(小脳・脳幹の側)の腫瘍では約1か月、前側では約6か月だった。
  • 手術
    ネコさんに多い髄膜腫は、脳の表面にでき、手術で取りやすいことが多い。手術を受けたネコさん26頭の報告では、生存の真ん中の値は881日。ただし、退院前に3頭が亡くなり、データのある24頭の半数余りに何らかの合併症があった。
  • 放射線
    大学病院など、限られた施設で行われている(2015年の解説では、獣医学科のある16大学のうち約10大学)。照射のたびに全身麻酔が必要で、腫瘍を抑えることを目指す場合は、週に何回も、数週間通う。髄膜腫と推定されたワンちゃん285頭をふり返った研究では、生存の真ん中の値が、放射線の子で696日、手術の子で297日だった(同じ条件で比べた研究ではない)。
  • 抗がん剤
    神経膠腫などに使われることがあるが、効き目ははっきりしていない。

手術も放射線も、全身麻酔と、通院と、費用の負担を伴います。どこまでの手当てを選ぶか、選ばないか。その子の年齢、体力、暮らし、そして飼い主さんの思いで決めることです。

水頭症

脳の中の液体(脳脊髄液)がたまり、脳を内側から押す病気です。チワワなど超小型犬に多いとされますが、どのくらいいるかを示すデータはありません。頭のてっぺんの骨のすき間(泉門)が開いているだけでは、水頭症とは言えません。 頭が丸く大きい、覚えが遅い、発作、目が外を向く、といった症状が、良くなったり悪くなったりします。

手当ては、脳脊髄液を作る量を減らす飲み薬(ステロイドなど)と、脳の中の部屋からお腹の中へ細い管を通して液を逃がす手術(シャント手術)です。ワンちゃんをふり返った研究では、飲み薬の12頭で改善6頭・悪化6頭、手術で追跡できた26頭で改善14頭と、どちらにも良くなる子と悪くなる子がいました。ワンちゃん30頭とネコさん6頭の手術の報告では、7割余りが改善し、2割余りに手術のあとの合併症がありました。飲み薬どうしの効き目を比べた臨床試験は、まだ見つかっていません。

キアリ様奇形・脊髄空洞症

頭の骨が小さく、脳の後ろが押し出されて、首の脊髄の中に液体の空洞ができる病気です。キャバリアでは、MRIで約4割に空洞が見つかったという調査があります。ただし、6歳で症状のない空洞のあったワンちゃんは、15頭中14頭がその後も症状が出なかった、という報告もあります。首や肩を、足で空中を掻くように掻く・首を触られるのを嫌がる・急に鳴く、などが症状です。

症状がなければ、治療はしません。痛みには、神経の痛みを和らげるお薬(プレガバリン・ガバペンチン)などが使われます。キャバリア12頭の比較の試験では、プレガバリンを飲んだ時期は、偽の薬の時期より、運動中(10分間)に掻く回数が84%少なくなりました。手術(頭の後ろの骨を広げる手術)もありますが、15頭の報告では、約8割が良くなったものの、7頭(47%)が平均1.3年ほどで再び悪くなっていました。

第8章 日本の検査と治療の流れ

検査

脳の病気の検査は、段階を踏んで進みます。

  • 1段目
    話を聞く(発作の動画がとても役に立つ)、からだと神経の診察、血液と尿の検査。
  • 2段目
    MRIと、脳脊髄液の検査。

ワンちゃん・ネコさんの脳のMRIは、通常、全身麻酔をかけて行います。 費用は施設によって大きく違います。ペット保険会社が示した1つの例(5歳のダックスフントの1回の通院)では、MRIが7万8千円、全身麻酔が1万5千円で、合計11万1,900円でした。

造影剤と、全身麻酔のこと

MRIでは、造影剤(ガドリニウム)を静脈に注射して撮ることがあります。腫瘍や炎症、関所(血液脳関門)が破れた場所を、浮かび上がらせるためです。てんかんを調べるための国際的な撮り方の推奨では、造影はすべての子に必須ではなく、ほかの病気が疑われるときなどに加えるもの、とされています。腫瘍や炎症を疑うときには、大切な手がかりになります。

麻酔中の記録をふり返った研究では、造影剤のあとに重い反応が出たのは、ワンちゃん425頭中1頭、ネコさん49頭中0頭でした。脈・呼吸・血圧が一時的に大きく動いた子は、ワンちゃんで2割、ネコさんで1割余りいましたが、麻酔そのものの影響と区別することはできません。

なお、背骨の中に造影剤を入れて脊髄を写す検査(脊髄造影)は、MRIの造影とは別のもので、ワンちゃんでは3%の子にけいれんが起きたという報告があります。

そして、忘れてはならないのが、全身麻酔そのものの危険です。英国の大きな調査では、麻酔や鎮静に関わって亡くなった割合は、全身の状態が良いネコさんで0.11%(約900頭に1頭)、全身の状態が悪いネコさんで1.40%(約70頭に1頭)でした(さまざまな処置を合わせた数字で、MRIや脳の病気に限った数字ではありません)。亡くなったネコさんの約6割は、処置が終わったあとの時間に亡くなっていました。麻酔の前後に亡くなったネコさんを調べると、前もって分かっていなかった心臓の病気(心筋症)が見つかることもあります。

ふらつきや発作で脳の検査を勧められる子の麻酔の危険は、年齢、意識の状態、心臓・呼吸・腎臓の状態などによって違います。高齢の子や、具合の悪い子では、造影剤のことだけでなく、全身麻酔と、処置のあとの時間、そしてもともとの病気の重さに、気を配る必要があります。

MRIを受ければ治る、わけではない

MRIは、病気の場所と、どんな病気らしいかを推定する検査です。場所が分かれば、使うお薬や手当てを、より的確に選べることがあります。けれども、

  • 確定には、組織の検査が必要な病気がある
  • 分かっても、治療の選択肢が限られている病気がある
  • MRIを受けられる施設は限られている

つまり、MRIを受ければ治る、というわけではありません。

英国の一般の動物病院の記録では、てんかんと記録されたワンちゃんのうち、MRIを受けたのは13.9%でした。MRIを受けない選択をする飼い主さんも、実際にはたくさんいらっしゃいます。 高齢の子、心臓や腎臓に病気のある子では、全身麻酔そのものが負担になります。MRIで何が分かり、分かったら何が変わるのか。それを確かめてから決めても、遅くはありません。

お薬を始める基準

ワンちゃんの特発性てんかんでは、国際的な指針(国際獣医てんかん特別委員会と、米国獣医内科学会)が、長く飲むお薬を始める目安を示しています。次のどれかに当てはまるときです。

  • 6か月以内に、2回以上の発作
  • 発作の重積、または群発発作
  • 発作のあとの症状がとくに重い、または24時間以上続く
  • 発作の回数・長さ・重さが増えてきている

そして、この指針自身が、飼い主さんの暮らし・費用・お薬を飲ませる負担を考えて、1頭ずつ決める、と書いています。1回発作があったから、すぐに一生のお薬、ではないのです。

お薬で、発作はどこまで止まるのか

お薬で発作が完全に止まる(寛解する)ワンちゃんは、14〜15%でした。代表的なお薬のフェノバルビタールでは、発作が半分以下になるのが64.5%です。適切なお薬を使っても、約3分の1の子は発作が続くことが、人でもワンちゃんでも知られています。

お薬は、発作を減らす手段の1つです。けれども、お薬で発作が完全になくなる子は多くありません。十分に抑えられない子では、お薬の量が増え、別のお薬が足され、1種類、また1種類と重なっていきます。

第9章 使われるお薬は、ワンちゃん・ネコさんのために作られたものか

動物用に承認されたお薬は、わずか

日本で、ワンちゃんの特発性てんかんの効能で、動物用医薬品として承認されている成分は、国のデータベースで確かめた範囲では2つだけでした。

  • ゾニサミド(商品名:コンセーブ、エピレス)
  • イメピトイン(商品名:ペクシオン)

どちらもワンちゃん用です。ネコさんの抗てんかん薬は、動物用として承認されたものが、国のデータベースで1つも確認できませんでした。

いっぽう、国際的な指針でワンちゃんの第一選択のお薬の1つとされるフェノバルビタール、追加でよく使われるレベチラセタムと臭化カリウム、発作のときに使うジアゼパムの坐薬。これらはどれも、国内の動物用の承認品が確認できず、通常は人のお薬が使われています。

脳炎(MUO)で使われるステロイドや免疫抑制剤は、動物用の承認品がありますが、承認されている効能は皮膚炎や関節炎などで、脳炎ではありません。

獣医さんが、人のお薬や、承認とは別の目的でお薬を使うことは、法律で認められています。ただし、そのとき、ワンちゃん・ネコさんでの量や副作用は、国の承認の審査で確かめられたものではありません。

そして、人のお薬をワンちゃん・ネコさんに使ったときの副作用は、国の動物用医薬品の副作用データベースでは、薬ごとにまとめて集計される仕組みになっていません。 飼い主さんが副作用の情報を探そうとしても、まとまった形では見つからないのです。

お薬ごとの、知っておいていただきたい副作用

ここに挙げるのは、研究や添付文書で報告されている主なものです。すべての子に起きるわけではありません。けれども、飼い主さんが知らないまま飲ませ続けることがないように、書いておきます。

お薬承認ワンちゃんネコさん
フェノバルビタール人のお薬眠気・ふらつき・食欲と飲む水の増加。肝臓の障害(肝硬変まで進んだ例がある)。血液を作る働きの低下。皮膚の病気(表在性壊死性皮膚炎)。甲状腺ホルモンの低下眠気。69頭中53頭(76.8%)で血液の細胞のどれかが減っていた(多くは軽い〜中くらい)
臭化カリウム人のお薬フェノバルビタールと一緒に使うと、膵炎が少なくとも1割(単独では0.3%)。眠気・食欲の増加咳・気管支炎・肺炎。約半数に副作用が出た報告があり、一般に勧められていない
ゾニサミド動物用(ワンちゃん)吐く・食欲の低下・元気の低下・眠気。肝臓の障害(急に肝臓が壊れた例)。血液の細胞の減少。血液が酸性に傾く・カリウムの低下。関節炎承認外。眠気・食欲の低下・ふらつき
イメピトイン動物用(ワンちゃん)ふらつき・食欲の増加・眠気・水をよく飲む・攻撃性の変化。ある研究では、新しく始めた子の22.6%が、最初の1か月で副作用のためほかのお薬に変えていた承認外。データなし
レベチラセタム人のお薬眠気。効き目が数か月で落ちてくることがある(14頭中、効いた9頭のうち6頭で4〜8か月後に発作がまた増えた)一時的な元気・食欲の低下
ジアゼパム人のお薬眠気・ふらつき(発作のときの坐薬・注射)飲み薬で続けて使うと、急に肝臓が壊れることがある(11頭中10頭が15日以内に命を落とした)。発作のときの使い方とは別の話
プレドニゾロン(ステロイド)動物用は皮膚炎など。脳炎は承認外水をよく飲む・尿が増える・食欲の増加・吐く・下痢。長く使うと筋肉の衰え・副腎の病気(医原性クッシング症候群)・感染同様
メトロニダゾール動物用は下痢の一部の病気。脳の目的は承認外ふらつき・目が揺れる・発作(小脳の症状)。思われていたより少ない量でも起きる同様の報告

いくつか、とくにお伝えしたいことがあります。

  • フェノバルビタールは、甲状腺ホルモンの数値を下げます。 健康なワンちゃんに飲ませた研究でも、数値が下がりました。そのため、本当は甲状腺の病気ではないのに、甲状腺機能低下症と診断され、甲状腺のお薬がさらに加わることがあります。やめると、数週間(5週ほど)で元に戻ります。
  • フェノバルビタールは、ほかのお薬を効きにくくします。 肝臓でお薬を分解する働きを強めるため、一緒に飲んでいるレベチラセタムやゾニサミドの血液の中の濃度が下がります(レベチラセタムは約3分の1)。効きにくい → 量を増やす → さらに別のお薬を足す、という連鎖が生まれやすいのです。
  • ネコさんには、避けるべきお薬があります。 臭化カリウムと、ジアゼパムの飲み薬の連用です。

お薬が増えていく連鎖(起こることがある一例)。発作が抑えきれない、量を増やす、別のお薬を足す、副作用が出る、副作用にまた別のお薬、をくり返す。断ち切るために、副作用を知る・記録をつける・ごはんを先に整える

第10章 お薬が乱すもの ― 塩分・電解質・栄養

臭化カリウムと、ごはんの塩分

臭化カリウムは、からだの中で塩分(塩化物)と同じように腎臓から出ていきます。そのため、ごはんの塩分の量で、血液の中の薬の濃度が大きく変わります。

  • 塩分が増えると、薬の濃度が下がり、発作が戻ることがある(尿の結石用の療法食に変えたワンちゃんで、発作が再発した例がある)
  • 塩分が減ると、薬の濃度が上がり、中毒になることがある(人の臭化カリウムの説明書でも、塩分を控えた食事をしている人には使わないこととされている)

国内のお薬の説明書にも、ごはんを変えたことで臭化カリウムの濃度が下がり、発作がまとまって起きたと考えられる例が書かれています。

安全メモ:臭化カリウムを飲んでいる子のごはんの切り替え

ごはんを手作りに変えるとき、フードを変えるときに、塩分の量が急に変わらないようにしてください。発作が戻ったり、反対に中毒になったりすることがあります。切り替えるときは、かかりつけの先生に、血液の中の薬の濃度を測ってもらいながら進めてください。

ゾニサミドと、カリウム・血液の酸性

ゾニサミドは、からだの中の重炭酸(血液を中和するもの)を失わせ、血液を酸性に傾け、カリウムを下げることがあります。日本のゴールデン・レトリーバーで、元気がなくなり、カリウムが下がり、腎臓の働きに異常が出て、お薬を減らしたら良くなった例が報告されています。元気がない・食欲がない・ふらつく、といった症状が、お薬から来ていることもあるのです。

人で知られている、お薬と栄養

人では、抗てんかん薬を飲んでいる子どもの約3割で、ビタミンDが不足していたことが知られています。フェノバルビタールなどで、血液の中の葉酸が下がることも知られています。ステロイドを長く使うと、骨が弱くなるため、カルシウムとビタミンDが大切にされています。

ワンちゃん・ネコさんで、これを測った研究は、ほとんどありません。ただ、フェノバルビタールを飲んでいるワンちゃんの血液を調べた研究では、たんぱく質(アルブミン)や、グルタミンというアミノ酸、からだに大切な脂肪酸が少なかったと報告されています。

調べられていないことは、起きていないこととは違います。 お薬が肝臓の働きを変え、食欲を変え、電解質を乱すのであれば、そのしわ寄せは、ビタミン・ミネラル・たんぱく質の不足として表れやすいと当店は考えています。お薬を飲んでいる子ほど、ごはんの質と、足りない栄養の補いが大切になります。何をどう補うかは、「正しく食べて脳を守る」のページでお話しします。

第11章 お薬を減らしていくために

減らせる子はいる

お薬を飲み続けるのは、飼い主さんにとっても、ワンちゃん・ネコさんにとっても、大きな負担です。

減らせる子は、います。

  • 研究では
    お薬で発作が止まり、寛解に至るワンちゃんが14〜15%いた。手作りのごはんに変えたワンちゃん2頭の報告がある。1頭は、肝臓の働きが落ちてきたため、かかりつけの先生のもとでフェノバルビタールを少しずつ減らし、1日40mgから8mgへ、8割減らした(その後、発作のない期間が続いた)。もう1頭は、元気がない・食欲がないなどの副作用が出て、飲み始めて2週間で、飼い主さんが自分の判断で急にお薬をやめたあと、ごはんを変えて発作が消えた(急にやめることは勧められない。次の節で)。ただし2頭だけの報告で、ごはんで安全にお薬を減らせることを、比べる相手を置いて確かめた研究はまだない。お薬の量を変えずに中鎖脂肪(MCT)を加えた2つの試験では、発作が減ったワンちゃんがいた。
  • 当店では
    ごはんを見直し、足りない栄養を補い、暮らしの中の悪いものを減らすことで、発作が減り、お薬を減らせた子、お薬を飲まなくなった子を、これまで見てきました。

急にやめてはいけない

いっぽうで、確かなこともあります。

  • 国内のお薬の説明書に、急に減らしたりやめたりすると、発作の重積や、さらに強い発作が起きることがあると書かれている
  • 発作が止まっていた期間のあとに飼い主さんがお薬をやめたワンちゃん11頭のうち、7頭で発作が戻り、お薬を再開して発作が止まったのは、そのうち3頭だけだった

一度強い発作がぶり返すと、元のお薬に戻しても、前のようには抑えられないことがあるのです。

当店の考える順番

お薬を減らすときの順番は、次のとおりです。

ごはんを先に整え、発作が落ち着いてから、少しずつ減らす。急にやめない。

お薬を減らしていく順番。ごはんを整える、記録で落ち着きを確かめる、先生と計画を立てて少しずつ減らす、減らしたあとも記録を続ける。急にやめない

  1. ごはんを整える
    質の良いごはん、水分、足りないビタミン・ミネラルの補い。暮らしの中の悪いもの(空気・日用品・虫よけの薬)を減らす。
  2. 記録で、落ち着きを確かめる
    発作の記録をつけ、回数・長さ・重さが、ごはんを整える前より落ち着いてきたことを確かめる。
  3. 少しずつ減らす
    1種類ずつ、少しずつ。減らす幅と間隔は、お薬の種類・一緒に飲んでいるお薬・血液の中の薬の濃度によって違う(フェノバルビタールでは、1か月に2割以内を目安に減らす方法が示されている)。かかりつけの先生と一緒に、減らし方の計画を立て、血液の中の薬の濃度を測ってもらいながら進める。量を自己判断で変えないでください。
  4. 減らしたあとも、記録を続ける
    発作が増えたら、すぐにかかりつけの先生に伝え、計画を見直す。

臭化カリウムを飲んでいる子は、ごはんを切り替えるときの塩分に、とくに気をつけてください(第10章)。

お薬を減らすかどうか、どこまで減らすかを決めるのは、飼い主さんです。かかりつけの先生には、「減らしていきたい」と、はっきりお伝えください。そして、迷ったときは、いつでも当店にご相談ください。

むすび 病名がついたあとも、できることはたくさんある

てんかん、認知症、前庭疾患、脳梗塞、脳炎。脳の病気の名前は、どれも重く響きます。

けれども、病名がついたあとも、飼い主さんにできることは、たくさん残っています。

  • 発作を記録し、その子の起きやすい条件を知ること
  • 夜鳴きや徘徊を「年だから」で片づけず、甲状腺・腎臓・血圧を確かめること
  • 使われるお薬が、ワンちゃん・ネコさんのために作られたものか、どんな副作用があるのかを知ること
  • ごはんを整え、お薬が乱すものを補うこと
  • 急がず、少しずつ、お薬を減らしていくこと

どのお薬を使うか、使わないか。MRIを撮るか、撮らないか。決めるのは、いつも飼い主さんです。そのための事実を、このページでお伝えしました。

ごはんで脳を守る具体的な方法は、「正しく食べて脳を守る」のページでお話しします。

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これらは治療薬ではなく、獣医さんの治療に代わるものではありません。持病があったり、治療中のお薬がある場合は、原材料と使い方をご確認のうえ、かかりつけの先生にもご相談ください。

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*NinnaNanna(ニンナナンナ)では、シッポを持つ家族の総称としてシッポちゃんと呼びます。
また 犬 をワンちゃん、猫 をネコさんと敬意を以て表現しています。



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